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Jリーグ初の女性監督への道。イニエスタと同郷、鈴鹿のミラが通る!【前編】

『三重県サッカー選手権大会』を制した鈴鹿 写真提供: 鈴鹿ポイントゲッターズ

戦術「どんなシチュエーションでも相手をコントロールする

ミラ監督が指揮した1年目は序盤からスペイン流の軽快なスワークが冴え、鈴鹿は初めてのJFLの舞台で好調なスタートを切った。中盤戦は相手の対策に苦しんだが、ロングボールを上手く使い分けて攻守を整備し、ラスト10試合を5勝3分2敗と見事に復調。初めてのJFLで12位と残留を勝ち取る。また、エースFWエフライン・リンタロウがリーグ得点王とベストイレブンを獲得した。

コロナ禍の影響でシーズンの半分の日程消化となった2年目はスタートで躓き、初勝利は5戦目に。そこから9試合で6勝を挙げて一気に上位へ躍進。ラスト2試合を未勝利で終えたものの、最終的には5位でフィニッシュした。

この間、ミラ監督は欧州最先端の戦術も部分的に取り入れて来た。サイドバックが内側に入って中盤でボールを動かし、相手のカウンター対策にもなる「ファルソ・ラテラル」(偽SB)の要素などだ。現在は自陣で緻密にビルドアップを図って相手陣内にスペースを作り、中長距離のフィードからダイナミックなカウンターを仕掛ける。そう、J1の大分トリニータが披露する“疑似カウンター”が観られる。

鈴鹿サポーターのセンスの良い横断幕(本稿タイトルに拝借)写真提供:鈴鹿ポイントゲッターズ

「私たちのチームには確かにそういった戦術的な特徴はあります。ただ、私はどんなシチュエーションでも自分達がコントロールしているような状況でいることを目指しています。

例えば、現在のチームが取り組んでいるものでも『前からボールを奪ってショートカウンターで得点を獲れている』のは、『相手のビルドアップをしっかりと狙いを持ってプレスが仕掛けられている』からです。『長いボールを使う』のは、『自分達がビルドアップから相手のプレスをおびき出して相手の背後にスペースを作れている』からです。

相手に対して、攻撃面から見ても守備面から見ても、自分達がコントロールしているのが理想ですね」

―そういったサッカーをするにはどのような割合でトレーニングを組んでいくのですか?

「平均的なやり方だと、試合で出たエラーを修正して自分たちのパフォーマンスを向上させていくことが60%、相手チームの対策についての攻撃の仕掛け方や守備のやりかたに20%、さらにセットプレーで20%という具合です。

相手の対策も大事なのですが、分析とは違った状況が出てくる可能性も多いですし、ピッチに出て変えられることは何か?と考えた時、まずは自分たちのパフォーマンスを改善することができます。だから、まずはエラーを修正して自分達のパフォーマンスを向上していくことがベースとして大切にしていることですね」

鈴鹿ポイントゲッターズの選手たち 写真提供:鈴鹿ポイントゲッターズ

―今年のチームを語るうえでは昨年まで主将を務めたMF藤田浩平選手(現Cento Cuore HARIMA)が退団しました。彼の穴は影響があるのでは?

「彼は人間的にも素晴らしいので寂しさもあります。そして、彼は理解力が高い選手です。私が来た1年目から私がやりたいサッカーをピッチ上ですぐに実践し、周りにもそれを伝えてくれました。“もう1人の自分”という認識で捉えているほどに、私にとって特別な選手です。もちろん、彼の役割を埋めてくれている選手もいるんですが、その穴を埋めるのはもう少し時間がかかるとは考えています」

―ただ、ボランチの位置では海口彦太選手はドリブルで持ち上がったり、フィニッシュに絡むプレー。新加入の西村仁志選手は展開力や長短のパスセンスも光ります。去年までとは違った形は上手くいきそうですか?

「西村もそうなんですが、新加入選手も多いので彼等の持ち味をどう活かして組み合わせていくのかを考えています。今年の序盤はMF和田篤紀も怪我で離脱していたので、彼のいない状態のサッカーも作っていかないといけない状況でもありました。ただ、相手チームの特徴に対して適した選手を見つけて試合に挑んでいくということを毎週やっていますね」

―それで言うと、ミラ監督はサポーターがビックリするほど本当に大胆に先発メンバーを入れ替えますよね?試合の結果に関わらずGKでさえも入れ替えがあります。

「私のやり方としては訪れる試合に合った最適な11人を選ぶようにしています。例えば空中戦の競り合いが多く予想される試合では、空中戦に強い選手や前線でターゲットになれる選手を使いますし、前線からプレスをかけてくる相手と対戦する時には背後のスペースをつけるスピードがある選手を起用しています。

ただ、私は就任して3年目なので、多少のシステム変更や多くの先発メンバーの入れ替えがあったとしてもチーム力は変わりません。全選手についてそれが言えますし、そこには自信を持っていますね」

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