Jリーグ 鹿島アントラーズ

柳沢敦、大迫勇也、鈴木優磨「鹿島産FW選手の流儀」とは?

大迫勇也(現ヴェルダー・ブレーメン) 写真提供:Gettyimages

完成形の万能型・大迫勇也

また、鹿島はチームとしてカウンター攻撃を必殺の武器として常備しているため、FWには水準以上のスピードは必要不可欠だ。2011年に大型補強で注目を集めたブラジル人FWカルロンを始めとした典型的なポストプレイヤーはフィットできないのは歴史が証明しており、田代や長谷川のようなストロングヘッダーでもスピードは兼備している。

「FWも11人の1人」としての守備参加はもちろん、組織的な攻撃の一部として機能性を求められるのはサッカーという競技が進めば進むほどに、その度合いは増している。全員守備が当たり前の現代サッカーだが、鹿島はFWも組織的な守備戦術に組み込んだ日本では最初のチームだろう。鹿島の戦術は先進性があるようには見えないが、FWの守備タスクに関しては時代を先取りしていたように見える。

鹿島産FWは動き出しに鋭さがあり、相手との駆け引きに優れている。自らの得点はそれほどでもない。でも代表クラスのFWは輩出していて、何よりチームは歴代で考えると他クラブに比類なき強さを見せている。鹿島産FWは「得点」を奪う事よりも、「勝点」を奪う事に長けている。

2列目の選手が欧州クラブに高く評価される日本では、FW以上に得点力のある彼等を活かすことが求められる。ポストプレーに長けて万能型の大迫はまさに日本代表の軸となる鹿島産FWだ。


鈴木優磨 写真提供:Gettyimages

柳沢敦+鈴木隆行=異端児・鈴木優磨

ところが、近年になって異端児が現れた。今季ベルギーで17得点と量産したFW鈴木優磨(現シント・トロイデン)だ。

鹿島のアカデミー出身で“純鹿島産”なのだが、得点に特化したような生粋のFWであるため鹿島のトップチームでは異端児だった。それゆえにスーパーサブ起用が多かった。しかし、動き出しや身体を張れる部分に着目すると柳沢敦と鈴木隆行が組み合わさったような選手で、それを1人でこなせるFWである。今夏に欧州のトップリーグ移籍が注目されているが、高次元のリーグでどう適応するのか?それとも貫くのか?楽しみだ。

昨季後半戦に巻き返した鹿島は、2トップの存在が頼もしかった。

東京五輪代表の上田綺世は大学経由のアカデミー出身。柳沢のように動き出しが鋭く駆け引きも巧みだが、鈴木優磨のように得点に特化した点取り屋タイプでもある。昨季18ゴールを挙げてJリーグのベストイレブンに選出されたブラジル人FWエヴェラウドはハードワークとサイドMF起用にも応えられる万能型。鈴木優磨や上田よりも、実は彼の方が“純鹿島産FW”に近いのが面白い。

今季は彼等2人が怪我などで揃わないことが多く、開幕からの不振の要因だったのは間違いない。1.5列目で輝く荒木遼太郎、最前線でも引いた位置でも輝く染野唯月は共に19歳。ポジション“土居”の後継者となれそうなだけに、全員が揃った状態でクラブOBの相馬監督がどういった起用法や若手の抜擢を考えているのか楽しみだ。

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