4月29日、明治安田生命J1リーグの第22節にて、首位を走る川崎フロンターレとそれを追う名古屋グランパスとの“天王山”が実現した。5月4日には等々力陸上競技場にて早くも「第2ラウンド」が行われるという、何とも豪華な連戦が予定されている(15時キックオフ)。
豊田スタジアムで行われた第1戦では、川崎が4得点を挙げて王者の貫禄を見せる形となり、4-0の結果で名古屋との勝ち点の差を6に広げることに成功した。
名古屋の敗因は様々な要素が絡み合い一元化できないものであるが、マッシモ・フィッカデンティ監督の不在や試合開始直後の失点による“流れ”の悪さなどが絡んでいると思われる。なお、同監督は30日に新型コロナウイルス陽性と診断されたことが発表されており、次戦も不在と見られている。
ここでは、あくまでも俯瞰的に同試合ピッチ内の現象を見た側から、第2戦の展望を攻守に分けて名古屋目線でお届けする。
守備面
試合の流れとしては、第1戦と同じように川崎がボールを保持して、名古屋が守備から入りカウンターを狙うという構図になるはずだ。
第1戦では最終ラインを低めに設定して[4-4-2]のブロックを敷いて迎え撃つも、結果的には失敗だったと言わざるを得ないだろう。リーグ随一の攻撃力を誇る川崎を警戒してこの守備を選択したはずだが、それにより川崎はゴール前に押し込むことが容易になり、名古屋は奪ってからカウンターをしかけるもゴールまでの距離が遠く、前半は川崎のゴールに到達するシーンがほとんどなかった。
また、名古屋のセントラルハーフ(以下CH)は川崎の選手にマンツーマン気味に付いて行くので中央付近に穴が空きやすい構造になっており、DF-MFのライン間を使われ放題になっていた。マークしている選手に付いて行くこと自体は悪くないのだが、それによって生じるリスクへの対応が欠けていた印象が強い。同試合では前半30分に山﨑凌吾、宮原和也に代えて長澤和輝と成瀬竣平を投入。前線のFWを1枚削ってライン間の守備を強固にした[4-1-4-1]のシステムに変更し、中盤の選手が増えたことによりライン間から崩される回数は減った。
第2戦では、この[4-1-4-1]のシステムで試合に臨み、第1戦よりも勇気を持って数メートルほど高い位置からプレッシングを仕掛けることができればチャンスをつくられる機会とその質は軽減できると考えられる。
また2失点目のシーンのように、川崎は左サイドからのクロス攻撃時に、レアンドロ・ダミアンが意図的に自分より身長の低い吉田豊との競り合いを選択してくるだろう。このシーンを再現されないよう、しっかりとボールホルダーに寄せて正確なクロスを蹴らせないようにすることも重要だ。
川崎の攻撃時には左サイドバック(以下SB)の登里享平が高い位置を取っており、それによって空いたスペースを名古屋のマテウスがドリブルで切り裂いてカウンターを仕掛けることに成功していた。また、家長昭博が左サイドに寄って来たり、両インサイドハーフが揃ってサイドに流れたりするなどポジションバランスが崩れるシーンが見受けられ、名古屋としては奪うことができれば広大なスペースを使ってカウンターに出ることができるため、得点のチャンスも十分にあるはずだ。川崎が攻撃時に重心を前にかけることを逆手にとって、空いたスペースを使ってゴールを狙いたい。
攻撃面
守備面と同様に、[4-4-2]時は中盤の人数が川崎よりも1人少なく、思うようにパスをつなげずに上手く試合を進められなかった名古屋。その中盤での数的優位を活かし、アンカーとして余ったジョアン・シミッチがマテウスから柿谷へのパスを狙っていたことが象徴的で、クリーンなビルドアップが許されなかった。
[4-1-4-1]に変更すると、中盤の人数は3対3の数的同数となり、柿谷は敵DFラインの手前で受けて叩くことが可能になっていた。第1戦の55分のシーンでは、シミッチのマーク対象が稲垣祥になったことを利用して、その脇で受けて長澤にダイレクトパス。一気に攻撃を加速させることに成功していた。
また、川崎が前線から奪いに行くときはウィング(以下WG)がセンターバック(以下CB)からSBへのパスを背中で切るような位置に立つことが多く、名古屋のSBは構造上フリーになれる。中盤の選手を経由してSBに上手くボールを届けられれば前進がスムーズにいくだろう。
加えて前半31分では、SHのマテウスが内側に絞って川崎のSBにあえてマークされることにより、名古屋のSBに時間とスペースが与えられていた。このシーンに再現性があれば、川崎のゴールまで迫る回数も増えるだろう。
また、ロングボールを蹴る際には第1戦で何度かやっていたように、川崎のSB裏に蹴ることが望ましいだろう。空中戦に強い川崎のCBのところに放り込むと高確率で跳ね返され、不用意なカウンターを食らう可能性がある。なので第一に失点を避けるべく、ロングボールは川崎のSBの頭を超えるようなパスにして、スピードのあるSHまでボールを届けたい。もしこのパス通らなくても、タッチライン際のスローインもしくはゴールキックから再開になるため、ある程度セットした状態から守備を始められる。つまりこのロングボールは、自分たちのペースで試合を進めるためには重要な意思決定となる。
おわりに
ワンサイドゲームになってしまった第1戦を踏まえて、5月4日の第2ラウンドで名古屋グランパスはどのような修正を施して臨むのか。負けてしまうと川崎フロンターレの独走がいよいよ本格的に始まることになるため、名古屋としては何としても阻止したいところ。等々力陸上競技場での試合から目が離せない。
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