FIFAワールドカップでなかなかベスト16の壁を破れない日本。
しかし、冷静に考えれば2010年の南アフリカ大会以降の3大会で2度のグループリーグ突破という結果は決して悪くはない。イタリアは同3大会でグループリーグ敗退が2度と欧州予選敗退1度である。少なくとも日本はこの10年ほどはイタリアより世界での実績で勝るという現実もあるのだ。
ただし、国内リーグのレベルや歴史においてはイタリア・セリエAに大きく劣っているのは事実である。それでも日本にも世界に誇れる国内リーグはある。J2である。何といっても日本代表MF香川真司(現PAOKテッサロニキ)とブラジル代表FWフッキ(現アトレチコ・ミネイロ)を輩出したリーグである。
香川もフッキもJリーグが育てたワールドクラスの選手なのだが、彼等のJ1出場記録は香川が11試合7ゴール、フッキも22試合8ゴールのみ。それに対してJ2は香川が114試合48ゴール、フッキが80試合62ゴールを記録。彼等は確実にJ2が育て上げた選手である。
柏のJ1昇格即優勝、G大阪J2降格、J2マガジン創刊
フッキは2007年に、香川は2009年にJ2得点王に輝き、共に半年後に欧州の強豪クラブであるポルト、ボルシア・ドルトムントへと羽搏いた。彼らの成功は、「有力な若手選手と無名の外国籍選手の発掘」というJ2を楽しむための主要コンテンツとなった。
そして、2013年7月には『月刊J2マガジン』(ベースボール・マガジン社出版)なる国内2部リーグに特化した異端な雑誌も生まれた。すでに紙媒体が危機に直面していた中でかなり攻めた雑誌であったが、売れ行きは好調で需要は高かった。
その背景には柏レイソルが2011年にJ1昇格即リーグ優勝という偉業を達成したこと、2010年にFC東京、2012年にはガンバ大阪、2013年にはジュビロ磐田という当時の現役日本代表選手が所属する有力クラブが軒並みJ2降格に陥り、当該クラブには皮肉でも、それがJ2全体としての盛り上がりにつながったのだ。
そして何よりも2012年シーズンから採用された「J1昇格プレーオフ」の導入が最も大きい。J1昇格を掴むためのプレーオフ出場枠が3位から6位にまであることが最終節まで多くの対戦カードで何かが起きる可能性を与え、J2がエンタメ性も含めた大きな魅力を備えるリーグとなった。
その後、「J1昇格プレーオフ」はプレーオフ勝者クラブのJ1での実力不足が疑問視されて2018年以降はJ1・16位チームとの入替戦を絡めた「J1参入プレーオフ」へとマイナーチェンジを経たが、今では競技力という本物の実力が付いた世界に誇れる国内2部リーグとなっている。
『月刊J2マガジン』は2016年5月に月刊化を終えたが、2019年には芥川賞作家・津村記久子氏がJ2をパロディ化した日本のサッカー2部リーグ最終節11試合を舞台にした新聞短編コラム著書『ディス・イズ・ザ・デイ』(朝日新聞出版)を発表しサッカー本大賞を受賞。出版の世界でもJ2というコンテンツは魅力的であり続けている。
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