リバプール、7勝1敗4分。トッテナム、7勝1敗4分。
得失点差で後者が優位に立っていたものの、ほとんどイーブンな状況での首位攻防戦となった、プレミアリーグ第13節リバプール対トッテナム。
試合結果としては2対1でリバプールが首位を奪う形になったが、ゴール期待値を見てもあまり差は見られず、五分五分と言っていい内容で天王山にふさわしいゲームだった。
スターティングメンバー
大会:プレミアリーグ第13節(2020年12月16日)
開催地:アンフィールド
カード:リバプール(赤)vsトッテナム(白)
スコア:2-1
「矛と盾」の分かりやすい試合展開
試合はトッテナムがリバプールにボールを持たせてカウンターを仕掛けるという明確な展開であった。
リバプールはポゼッション率で約70%を記録し、ほとんどボールを握っていた。数年前の彼らであればボールを持たされた時の崩しは脅威ではなく、下位相手にブロック守備を敷かれて勝ち点を取りこぼすゲームがしばしば見られた。だが、現在のリバプールはボールを持っても持たれても、カウンターを仕掛けても仕掛けられても強い。隙らしい隙がないので、リーグ戦でも安定して勝ち点を重ねることができるようになっている。得点数も13節終了時点で29点と、堂々の1位だ。
一方のトッテナムは今シーズンのリーグ戦で最少失点(13節終了時点)を誇る、プレミアリーグ最強の「盾」。しかし、ジョゼ・モウリーニョ監督率いるスパーズ(トッテナムの愛称)は堅守だけが強みではない。ハリー・ケインとソン・フンミンを中心とした攻撃ユニットがカウンターを主な得点源としてゴールを量産している。そんな両チームの狙いを見ていこう。
リバプールの厄介な3人組+α
トッテナムは守備時に4-4-2でセットし、2トップがハーフラインより数m前の位置から敵CBに牽制をかける。奪いに行こうとはせずに、ビルドアップに対してストレスを与えてスムーズに前進させないイメージだ。守備ブロック内にボールが侵入すると、2列目と3列目の選手が勢いよくプレッシャーをかける。
それに対してリバプールは、ヘンダーソンやIHの選手がCBの横に降りてきてボールをもらい、ビルドアップを手助けする。後ろが3人になったことでリバプールのSBは高い位置に行くことができ、それに伴ってトッテナムのSHも押し下げることができる。つまり、トッテナムのSHはカウンターに出るときの走る距離が長くなる。だが、この試合で本職ではないSHで起用されたシソコはカウンター時に長い距離を走れる上に試合終盤までそれを続けられるので、それほど気にしていなかったかもしれない。
また、リバプールの強力なSBに対して、低い位置での守備にも貢献できるシソコとベルフワインをこの試合で起用するというモウリーニョらしい采配と人選もあった。
上図の配置でのビルドアップによって、トッテナムの2トップ脇でフリーでボールを持つ選手を得たリバプール。ハーフラインを超えてからは、主にジョーンズ、ロバートソン、マネの3人の相互作用と動きで相手をかく乱する。
上の図のように、マネがシソコの視界に入るように降りてきて、「ロバートソン&マネVSシソコ」の小さな2対1を作り出す。これによってシソコはどちらにマークにつくか決断を強いられ、20分の場面ではロバートソンに裏抜けを許してしまった。また、13分の場面ではジョーンズがロバートソンとマネを追い越してトッテナムのブロック内に侵入しボールを受けていた。
この3人の関係性だけでも厄介なのだが、時々ここに+αでフィルミーノが登場し、さらにトッテナムの守備陣を迷わせる。
先制点の場面ではジョーンズの横に降りてきてワンツーでのコンビネーションで突破を促し、一気に相手の懐に侵入に助太刀。サラーのゴールまでの陰の立役者となった。
トッテナムの早くて速いカウンター
ボールを持たせてカウンターを虎視眈々と狙い続けたトッテナム。堅牢な盾のような守備で奪ってから相手のCB横のスペースを突く彼らの速攻は鋭い矛と化し、リバプールゴールを何度か脅かしていた。
前述したようにリバプールは攻撃時に両SBを高い位置に押し上げるので、どうしてもその後ろに大きなスペースができてしまう。SBを崩しに参加させることで生じるデメリットなので、ある程度は仕方ない。
トッテナムはボールを奪うとすぐにこのスペースに向けて人とボールを送り込む。奪ってからの切り替えとプレーの判断に要する時間がとても早く、ここにCFが流れたりSHが走り込んだりするまでのスピードが非常に速い。おそらくトレーニングで洗練されたカウンターなのだろう。
33分のゴールシーンでは、ロリスがボールをキャッチしてからカウンター発動。ロ・チェルソに渡し、彼がドリブルで運んでからリバプールのCB横のスペースへ走り込んだソン・フンミンにパスを出し、一気にアリソンの守るゴールを破って同点に追いつくことに成功。
GKのキャッチから始まっているとはいえ、おおよそ狙い通りのカウンターが決まったと言っていいだろう。
高次元でCBをこなせるものの本職はMFであるファビーニョとこの試合がプレミアリーグデビューとなったR・ウィリアムズのコンビは、怪我で離脱しているファン・ダイクやジョー・ゴメスのように広いスぺ―スでのカウンターの対応で後手を踏んだ。サッカーで結果論はナンセンスだが、ファン・ダイクがいればトッテナムのカウンターの威力は軽減されていたはずだ。
後半の修正、そしてセットプレーでの決着
後半になりトッテナムはシソコを左CH、ホイビュルクを右CH、ロ・チェルソを右SHに配置。対人守備に強いシソコを中央においてそこからの崩しを防ごうと試みる。
だが、これを嘲笑うかのようにフィルミーノが大外に流れてシソコを誘い出し、それによって空いたスペースを使う。相手の修正をすぐに逆手に取って攻勢に出るあたりは流石である。
その後も幅を大きく使ったリバプールのポゼッションに体力を奪われ、キレのあるカウンターを仕掛ける機会も前半と比べて減ったものの耐え続けたトッテナム。しかし、90分にCKでフィルミーノが勝ち越し弾をお見舞いする。困った時のセットプレーとはよく言ったものだ。
よって、劇的な幕切れとなった今回の首位攻防戦。試合後のモウリーニョの言葉を借りるとするならば、トッテナムにとっては「非常にアンフェア」な結果だろう。
だが、上記のように両チームに大きな差は見られなかった。また、13節終了時点で1位から10位までの勝ち点差はたったの8。まだまだどのチームが優勝するか予想できず、今後もプレミアリーグからは目が離せなさそうだ。
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