世界中で納得していない方が多いようだが、バルセロナのアルゼンチン代表FWリオネル・メッシが、2019年度のバロンドールを受賞した。今年の受賞で、6度目になる。
なぜメッシがまたも世界の最高の選手に選ばれたのでしょう。確かに前シーズン、バルセロナは国内リーグで優勝したが、チャンピオンズリーグ(CL)では準決勝で敗れた。また、ブラジルで行われたコパ・アメリカでも、メッシが所属するアルゼンチン代表は準決勝で敗れ、タイトルを獲っていない。
しかし、現代の考え方なら、彼がバロンドールを受賞したのはそんな不思議なことではない。
この数年バロンドールの審査が変わりつつある
バロンドールの受賞者は、国際的に活躍したクラブ/代表チームで輝いた選手の中から選ばれる、というのが昔からのコンセプトでした。しかしこれが変わりつつあることが、この数年トップ3に選ばれている選手でわかる。
マーケティングの一つの戦略かもしれないが、パーフォーマンスよりも得点をたくさんとって目立つ選手が優先されていると思いませんか?
現代では、2006年のようにDFファビオ ・カンナヴァーロ(受賞)や、GKジャンルイジ・ブッフォンが、1位と2位になるのは考えられない話です。
実際に2014年から今までのデータを見ると、トップ3に選ばれた守備的な選手は2014年の3位のマヌエル・ノイアーと、今年2位になったリバプールのフィルジル・ファン・ダイクのみです。
シーズン中、50得点以上を決める選手は無視できない
現在は、新聞の表紙やインターネットの検索のトップなどに出てくる選手じゃなければバロンドールを獲得できない印象が強い。所属クラブで実績を積み重ねるより、決めたゴールの数が大事になり、それぐらい目立つことが大事なポイントになってきている。
サッカー自体も変わりつつあり、守備を固めてカウンターチャンスを待つクラブがどんどん減っている。守備は高い位置でのプレスから始まり、相手の陣地にいることが増えてきた。当然フォワードの得点チャンスも増えるし、守備人は高い位置でボール奪われると、一瞬で切り替えて守備の整理することも難しくなった。
メッシは2018/2019シーズンの間に51得点を決めた。36得点でラ・リーガの得点王になった上で、12得点でチャンピオンズリーグの得点王にもなった。残りの3点はカップ戦、コパ・デル・レイで決めたものです。
今年だけではない、メッシは2016年から毎年ゴールデンシュー(ヨーロッパ各国のサッカーリーグの選手のうち、シーズンで最も多くの得点を挙げた選手)を受賞している。
今の審査の仕方を考えると、バルサとアルゼンチン代表がそんなに目立たなかったとしても、メッシがバロンドールの受賞者に選ばれたのは驚くことじゃない。
ライバルもあまりいなかったのでは?
メッシが今年のバロンドールを受賞したもう一つの理由は、争うライバルの不調子にもあると思う。
10年間以上メッシの1番のライバルだったクリスティアーノ・ロナウドは、ユベントスに移籍してからレアル・マドリードでほどのパフォーマンスができてない。確かにスクデット(セリエAリーグ優勝)を手に入れたし、ポルトガル代表とネーションズリーグ(ヨーロッパ各国の代表チームによって争われるサッカーの大会)も優勝した。しかし、得点の面では9年ぶりに40得点を切った。2018/2019シーズンではリーグ戦で21得点、CLで6得点、イタリアスーパーカップで1得点、合わせて28得点で、メッシとの差が開きすぎている。
CL優勝したリバプールから受賞者が出ても不思議ではなかった。しかし、このチームで目立っているのは高いクオリティーの選手個人ではなく、彼らが力を合わせて見せている最強のチームプレーだと思います。また、クラブのトップ選手であるモハメド・サラーとサディオ・マネも、前シーズンはメッシの半分ぐらいの得点しかとっていない上(サラー 27得点、マネ26得点)、それぞれの代表で話題になるほどの実績を出していない。
今の時代、メッシがバロンドールを受賞したのは結局当たり前な話になる…。一番強い選手が勝つ、それだけだ。しかし、バロンドールの審査は得点を取る選手の優先だけではなく、もっと全ポジションで活躍する選手を対象に検討しないと、数年で当たり前すぎて、つまらないものになると思う。
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