プレミアリーグ アーセナル

DR.TRIBE【試合診断書】プレミアリーグ第11節 アーセナル対リバプール

大会:プレミアリーグ
カード:アーセナルvsリバプール
スコア:1-1
担当医:菊池大将(@yukkenokonoko
【分析内容】
・マン・オブ・ザ・マッチ(MOTM)
・ザ・ハード・ワーカー(THW)
・モースト・ディサポティング・プレーヤー(MDP)
・両チームの攻撃vs守備
・両チーム監督
・主審


マン・オブ・ザ・マッチ(MOTM):ルーカス・トレイラ

洗練されたポジショニングと圧倒的なボランチとしての性能を発揮し、中盤を制圧した。ボール奪取能力に加えて、スペースのないところでのドリブル。更にはパスのレンジの長さまでを兼ね備えた選手が、まだ22歳という事実は恐ろしい。

ザ・ハード・ワーカー(THW):ジェイムズ・ミルナー

前半こそオーガナイズ的に消されかけたものの、運動力でスペースは潰し続けた。右サイドに移ってからは、アーセナルのビルドアップを阻害しつつ、カウンターでも重要な役割を果たした。あらゆるポジションで求められるプレーを実現できることは素晴らしい。

モースト・ディサポティング・プレーヤー(MDP):ピエール=エメリク・オーバメヤン

ここ最近の好調ぶりからすると、物足りないパフォーマンスに。スピードを生かして裏のスペースは取るもののそこからのアイデアに欠けた。ボールを引き出した後のプレーには改善の余地があるだろう。


アーセナルの攻撃vsリバプールの守備

いつものようにGKからしっかりとつないでビルドアップを行ったアーセナル。リバプールもモハメド・サラーとロベルト・フィルミーノでボランチをケアし、サイドバックにも気を遣っていたが、アーセナルが狙ったのはその2人の間。サラーを動かしながら、パスコースを作り出しグラニト・ジャカの長短のパス能力を存分に引き出した。

前線からのプレッシングをことごとく外されたリバプールとしては、中盤で主導権を握りたいところだったが、トレイラが立ちはだかる。俊敏さを活かした狭いスペースでの洗練されたプレーにより、中盤での主導権もアーセナルが握る形に。また、中盤2枚がしっかりと試合を作れることで、違いを作れるメスト・エジルが自由にプレーできたことも大きい。彼が要所でアクセントをつけることにより、アーセナルの攻撃が単調になることはなかった。

後半は守備のオーガナイズを変え、ミルナーを右サイドに置いたリバプール。数的不利の打開とビルドアップの阻害を狙い、概ねうまくいったと言えるだろう。先制され苦しいアーセナルはスペースのない現状を打破するために仕掛けることのできるアレックス・イウォビを投入。更に、ダニー・ウェルベックを投入して2トップ気味にすることで無理やりCBとの1対1を作りだし、ラカゼットがマークを剥がしやすい状況に。その結果、待ちに待った同点弾が生まれている。

その後も、サイドからハーフスペースでボールを受けようとするエジルや、前述のスペースのない部分での攻略を続けたが、逆転には至らなかった。リバプールとしては、早い段階でファビーニョの脇のスペースを消しておきたいところだっただろう。ヘンリク・ムヒタリアンのポジショニング、トレイラのスペースのないところでのプレーにより前半のほとんどの時間ミルナーに大きな仕事をさせなかったことも大きい。


リバプールの攻撃vsアーセナルの守備

基本的にはファビーニョを経由し攻撃を組み立てたリバプール。しかし、アーセナルの前線からのプレッシングにSB(特にアンドリュー・ロバートソン)が対応しきれなかったことやルーカス・トレイラの機動力抜群の制圧力により主導権はアーセナルに譲る形に。フィルミーノのポジショニングで局所的に数的有利を作り出すなど、工夫は見せた。アーセナルに対して効果的だったのはフィルミーノを2列目に下げるプレー。中盤での数的有利を作り出すと同時に、前線にサラーとサディオ・マネの2人のスピードスターを配置。CBとの質的な優位性を保ってゴールに襲い掛かった。

最終ラインのギャップを突かれながらも、ギリギリのところで耐えるアーセナルはトレイラを筆頭としたネガティブトランジションへのスムーズな切り替えでリバプールに自由を与えない。ジャカが効果的にプレスを与える選手を絞れていたのも大きい。特に、序盤は前を向けていたファビーニョへのプレッシングは的確で自由を奪った。

フィルジル・ファン・ダイクの攻撃参加により、徐々にアーセナルのゴールに迫ったリバプール。アーセナルとしてはセットプレーなどでもダイクをフリーにする場面が目立ったため、修正は必須だろう。

後半はサラーを最前線に置き、右サイドに置いたミルナーが上手にプレッシャーを与えることで厄介だったアーセナルのビルドアップを効果的に妨害。同時にカウンターへのスムーズな移行も実現させ、サラーと1つ遅れたタイミングで顔を出すマネで攻撃を完結させた。


ウナイ・エメリ

見事にリバプールのプレッシングを回避し、中盤を機能不全に追い込んだ。リバプールのシステムを嘲笑うかのようなビルドアップは特筆すべきだろう。すべての選手の特性を上手に引き出し、交代策も的確。リバプールを相手に先制を許したものの、善戦したと言えるだろう。


ユルゲン・クロップ

アーセナルのビルドアップと中盤での主導権争いに敗れたことで苦しい展開となった。それでもミルナーの配置転換や守備のオーガナイズの変更などで、アーセナル相手に敵地で勝ち点1を得ることができたのは大きい。ビルドアップの部分には改善の余地があるだろう。前からあれだけハメられてしまえば、中盤での優位性を保つことも難しい。


主審:アンドレ・マリナー

ほとんど大きなミスもなく、ビッグカードを裁ききった。多少際どい判定はあったものの、VARの導入されていないプレミアリーグでの判断は限界があるだろう。イエローカードも非常に少ない試合となった。



名前:菊池大将
趣味:サッカー観戦、映画鑑賞、読書
好きなチーム:ACミラン
幼少期に父親の影響でミランが好きになりました。アイドルはシェフチェンコ。パッション、データ、経済、カルチャー、サッカーの持つ様々な表情を見るのが好きです。よろしくお願い致します!

筆者記事一覧