サッカー界のバナナから「不寛容」を知る
単一民族である意識が強く、自分たちとは外見が違う人をほとんど無意識に「外国人」だと判断する日本は、こうした人種差別行為とは無縁な地だと考える人ももしかするといるかもしれないが、J1でも同じような問題が起きたことがある。それもアウベスに対してバナナが投げつけられてから4ヶ月ほどしか時間を置かずに。
2014年8月23日ニッパツ三ツ沢球技場で行われたJ1リーグ第21節、横浜F・マリノス対川崎フロンターレの試合で、マリノスのゴール裏サポーター1名が、フロンターレの選手に対してバナナを掲げて振る挑発行為を行った。この行為を重く受け止めたJリーグ側は、クラブに対して制裁金500万円を科した。
同年3月に浦和レッズのサポーターグループが、ゴール裏に「JAPANESE ONLY」と書かれた差別的な横断幕を掲げたことで、クラブが後に無観客試合の処分を受けていただけに、日本でもサッカーと人種差別の関係について考えさせられる年になった。
歴史をひも解くと、他国との距離が短くなり国際化が進むほど、その反作用とでも言おう「ナショナリズム」が台頭する。現在サッカー界(世界)で起こっている人種差別や民族差別は、他者を理解しようとしない傲慢さや、不寛容が原因で生み出されていると筆者は感じている。
私自身海外で生活した経験を持ち、幸いにもひどい人種差別を受けることはなかったが、まだまだ日本人に対するステレオタイプな考えに驚かされた経験はあった(なんと「日本人はいまだに死ぬときはハラキリ(切腹)するんだろ」と聞かれたこともあった)。しかしそれは私たちも同じであり、日本にいても以前と比べれば海外から来た人々と接する機会が増えてきているこの国も、「日本人」という“人種”や定義をもう一度考える必要がある時期に来ているのかもしれない。
もちろん、「サルはバナナが好き」というステレオタイプな考え方も見直したいと、少し緑がかったバナナの酸味を噛みしめながら思うのだ。
著者:ペペ土屋
フットボール・トライブ・ジャパン編集長。ベティコ。
Twitter:@PPDOLPHINS
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