代表チーム フランス代表

多彩なタレントと崩れぬバランス。磐石フランスが20年ぶり王座奪還へ

 ついにロシアW杯のベスト4が出揃った。どのチームもそれぞれ持ち味を出しながら苦しい時間帯もしっかりと耐え抜いて勝ち上がってきたが、中でも盤石の戦いぶりを見せているのがフランスだ。

 初戦はオーストラリアの守備に苦しみ、終盤にポグバが技巧的なシュートで決勝点をあげた流れだったが、ペルー戦でキリアン・ムバッペが同国最年少ゴールを決めて勝利に導くとデンマーク戦ではプラン通りの引き分けで首位突破。アルゼンチン戦ではムバッペの大活躍で4-3と撃ち合いを制し、準々決勝はウルグアイに2-0で完勝した。

 徹底的にパスをつないで崩すスタイルでもなければ、カウンターに特化したチームでもない。とにかく全体的にバランスが取れている中でムバッペ、アントワーヌ・グリーズマン、エンゴロ・カンテ、ラファエル・ヴァランなどワールドクラスのタレントが適材適所で能力を発揮して勝利に貢献できている。大会屈指のタレント力をバランスよく生かしているのは98年W杯の優勝キャプテンでもあるディディエ・デシャン監督の手腕に寄るところが大きいだろう。

 フランスはレギュラーをほぼ固定しているが、状況や時間帯に応じた選手交代のバリエーションがある。基本布陣は4-4-2でGKウーゴ・ロリス、4バックが右からベンジャマン・パバール、ヴァラン、サミュエル・ユムティティ、リュカ・エルナンデス、ボランチがカンテとポール・ポグバ、サイドハーフがムバッペと運動量豊富なブレーズ・マテュイディもしくはパスセンスの高いコランタン・トリッソ、2トップが長身のオリビエ・ジルーとスピードのあるグリーズマンという組み合わせだ。

 そこに攻撃のオプションとしてドリブラーのウスマン・デンベレ、左サイドのクロサーであるトマ・レマル、強烈なミドルシュートを誇るナビル・フェキルなど個性的なカードが揃う。一方で守備的なオプションも197cmの大型MFスティーブン・エンゾンジがおり、ウルグアイ戦ではパーフェクトな仕事で2-0のまま逃げ切る立役者となった。また左サイドバックにはパワフルでクロスの供給力が高いバンジャマン・メンディというカードもある。4バックは変わらないが、交代カードに応じて4-2-3-1にも4-3-3にもできる。

 ゲームコントロール力が高く、しかもデシャン監督が流れに応じた交代カードで攻守のバランスや攻撃に変化を加えることができる。スタメンは4-4-2というフォーメーションの中で補完関係が取れている。ボランチは攻撃センスが高く人に強いポグバと運動量が豊富で的確な組み立ても持ち味のカンテ、左右のサイドハーフが高速アタッカーのカンテとより中盤でプレーする意識が高いトリッソとマテュイディという組み合わせで、左サイドをトリッソにするのかマテュイディにするのか、あるいはサイドアタッカーのレマルを入れるのかで攻撃の狙いが違ってくる。

 戦術面とはまた別に目を引くのは年齢バランスの良さだ。スタメンを見るとキャプテンのGKロリスが31歳で4バックはパバール22歳、ヴァランが25歳、ウンティティ24歳、リュカが22歳。中盤はカンテが27歳でポグバが25歳。ムバッペが19歳であり、トリッソが23歳。マティディは31歳だ。そして2トップはジルーが31歳でグリーズマンは27歳だ。最後尾と最前線に精神的支柱となるベテランがおり、あとは20代の後半と前半がほぼ同数でいて最年少のムバッペ。左サイドで競争するトリッソとマテュイディは8歳差があるが、年齢に偏りがなく、勢いと落ち着きの両方を安定して出せる要因だろう。

 ドイツやブラジルなど優勝候補の列強が姿を消し、自国開催の98年から5大会ぶりの優勝がかなり近づいているが、ブラジルに勝って勢いに乗るベルギーもフランスに匹敵するタレント集団だ。その相手に対してどうゲームの主導権を握りながら勝機をものにするのか。ムバッペの活躍も期待されるが、バランスを崩すことなく個々が持ち味を発揮すればベルギーに勝利してファイナル進出を果たせる可能性が高まるはずだ。

著者:河治良幸

サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。セガのサッカーゲーム『WCCF』選手カードデータを担当。著書は『サッカー番狂わせ完全読本 ジャイアントキリングはキセキじゃない』(東邦出版)『勝負のスイッチ』(白夜書房)、『サッカーの見方が180度変わる データ進化論』(ソル・メディア)など。Jリーグから欧州リーグ、代表戦まで、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。NHKスペシャル『ミラクルボディー』の「スペイン代表 世界最強の”天才能”」に監修として参加。

Twitter:@y_kawaji