サンダーランドの下部組織で育ち、イングランド5部から2部まで期限付きを繰り返して経験を積んだ24歳の守護神は、2年前にはまだプレミアリーグデビューを果たしたばかりだった。しかしそこから印象的な活躍を見せたピックフォードは、エバートン移籍を経て昨年11月に代表デビュー。代表通算わずか3試合出場ながら、今大会で背番号1の座を与えられた。グループステージ第3戦のベルギー戦でアドナン・ヤヌザイにゴールを破られた際にはその能力を疑問視する声も上がったが、PK戦でカルロス・バッカのキックをセーブしたコロンビア戦に続き、スウェーデン戦でもヒーローになった。
「イングランドが最後にベスト4に残ったのは1990年だと思うけど、僕は当時は生まれていなかった。自分たちで歴史を作れると信じている」と語る守護神に対し、U-21代表時代から指導する監督も「重要な時間帯に重要なセーブしてくれた」と改めて高い評価を与えている。
国際経験の浅さは、スウェーデン戦でコーナーキックから貴重な先制点を決めたハリー・マグワイアも同様だ。この得点が代表初ゴールとなった25歳のセンターバックは昨年10月のW杯予選最終戦で代表デビューし、大会前のキャップ数は5に過ぎなかった。2年前の欧州選手権はスタンドでファンとして応援していたという。
「ワールドカップの準決勝に進めるなんて最高だよ」と初々しく語ったマグワイアは、スウェーデン戦のゴールに象徴される通り抜群の空中戦の強さを誇る。英『スカイスポーツ』によれば今大会の空中戦の勝利数はロシア代表のアルテム・ジューバに次ぐ2番目で、イングランドの守備に欠かせない存在に成長している。
同じようにサウスゲートが昨年代表デビューさせたキーラン・トリッピアーも、出色の出来を見せている。数か月前には先発の座も掴んでいなかった27歳は右のウイングバックで起用されると、デビッド・ベッカムと比較されるほどの正確なキックでセットプレーを含めて攻撃に大きく貢献している。今大会でネイマール、ケビン・デ・ブライネに次ぐチャンス創出回数を記録していることからも、その起用の成功が分かる。
より経験の豊富な選手たちとともに、サウスゲート監督が抜擢した才能は繰り返されてきた過去の失敗を振り払うかのように、勢いよく世界のベスト4に到達した。その姿はピックフォードが語った通り、自らの手でイングランドのサッカーの歴史を変える意欲にあふれているように見える。スウェーデン戦後、フットボールは母国に帰ってくるかと聞かれたマグワイアは「そうだといいね。そう願っているよ」と語っている。
著者:マリオ・カワタ
ハンガリー生まれドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC
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