ワールドカップ 代表チーム

日本代表西野朗監督、試合後コメント「4年後に今大会のチャレンジが成功と言えるようなサッカー界に」

ロシアワールドカップ・決勝トーナメント1回戦日本代表対ベルギー代表が日本時間3日に行われ、2-3で日本は敗北。ベスト16でロシアを去ることになった。日本代表を率いた西野朗監督が試合後に残したコメントをご紹介する。
(取材:河治良幸 文:編集部)


これでW杯の戦いが終わったが、2-3という結果を受けて何を思ったか?

(10秒ほど沈黙)善戦することだけでなく、勝ちきらなければいけない、勝ちきりたい。ある程度、今のチーム力であれば、かなりベルギーには抵抗できるのではないか。戦前、いろんなプランの中で、最高の流れを自分たちで掴んだ。自分の中でも、そういうプランはありましたけれど、最後こういう形になるゲームの組み立てというのは考えていませんでした。

2-0になって、メンバーもそのまま。3点目という気持ちは非常に強くありましたし、チャンスもありました。ある程度、ボールもゲームもコントロールする時間帯が直後にもありました。ただそこで、本気になってしまったベルギー。今日のミーティングでも、「本気のベルギーと戦いたい」と。そのためには自分たちがフルパワーで、そういうベルギー(の本気)を引き出さないといけない。

まさに最後の30分は、本気のベルギーに対抗できなかったという。終わった直後には、アドバンテージを持った流れで、最後を勝ち切るプランもしていましたが、あそこまで覆されるとは思ってもいなかったので。まあ、W杯なのかなと思ったし、(これが)ベルギーの強さ、という気持ちですかね。終わった直後は。

延長は考えなかったか。90分で決めるという気持ちだったのか?

あの時間でFKとCKの流れはあったので、少なくとも(90分で)決めたい気持ちはあったし、延長ももちろんその時点で考えていました。まったく、ああいうスーパーカウンターを受けるとは予測もしていなかったし、セットした選手たちも、ああいう流れで数秒後に自陣にボールが運ばれるとは思わなかったでしょうし。本当にそれが紙一重の勝負どころだと思いますけれど。もちろん、持久的にはボールも伴って動ける延長は想像できたので、決められなくても延長勝負という感じは持っていました。

この短期間いろいろあった中で、選手には最後どういう声をかけたのか?

すぐにシャワーを浴びろと(苦笑)。呆然と裸のままでいたので、そういう声がけが、まず。ホテルに帰ってから、声がけはしたいなと思います。

今大会通じて、コンディションが良かったと思うが

走れる力は、選手は持っていたと。持久力にしてもスプリントの回数にしても、ベースにはしっかり持っていると思います。それをゲームフィジカルとして、パフォーマンスとして出せるか出せないか。単にコンディションがいいと見るかどうか、戦術的とか技術的にボールをどう動かしていくかとか、(それを)伴った動き、フィジカル、ゲームパフォーマンスなので。

今日のゲームもそうですが、(グループステージの1・2戦、3戦もそうですが、しっかりボールを自分たちで動かせる。有効に動かして、無駄な動きが少ないのかなと思います。単純な戦術的な動きというのが少ない。全員で共有した中で動けている。同時性や連動性の中でパフォーマンスができているので、そう感じているところですし、走行距離はそう多くはないんですよね、本大会に入ってから。全体で100から110くらいの距離で。決して多くはないが、感じ方が有効に動いている、ボールを動かせている、ムービングフットボールが実現できているところは、フィジカル的というか、コンディションがよく見えるところであると思います。

選手のパフォーマンスと結果をどう思っているか?

結果については残念の一言です。(ベルギーを)追い詰めたけれど、やはり勝ちきれない。わずかであって、わずかでないかもしれないですが、ゲームの中ではわずかだと感じていました。それが采配によるものなのか、まだまだ本気にさせたベルギーに及ばなかったのか。選手たちは非常に今シリーズ、今までにないくらい非常に前向きで、ベルギーに対しても自信を持っていたので。やはりある程度、今日もチャレンジするパフォーマンスを出していましたし、選手は100%以上戦ってくれた、パフォーマンスを出してくれたとは思います。されど、そのわずかというところは、これから(日本)サッカー界で埋め直さないといけないという気持ちではあります。

このトーナメントは番狂わせが多かった。2-0から逆転されることは、なかなかなかったと思うが、このトーナメントをどう思うか。そして、ベルギーに逆転されたときにはどう思ったのか?

どういう気持だったということに関しては……。まず自分のゲームに対するコントロールが、自分としてどうだったかということを問いたいですね。2-0というアドバンテージをもらいながら、ひっくり返されているわけですから、それは選手たちの非ではなく、私のベンチワークによるものだと思います。ゴールを決められた瞬間というのは、自分に対する、采配に対して問うところではあります。

このトーナメントに対しては、W杯に対しては、選手は4年前のブラジル大会でベスト16に入れなかったことを、参加した選手だけでなく日本サッカー界、今回参加した選手全員が、あのコロンビアにグループステージの3試合目に負けてしまったと。あの瞬間の思いというものは、これは計り知れないです。そこから4年、積み上げてきた選手たち、日本代表チームの今大会に対する思いというのは、まして初戦がコロンビアという大会でしたし、そのリベンジへの思いというものは強く感じました。

今日に限っては、8年前のラウンド16で延長、ペナルティー、そして(試合を)落とした、そういう過去もありますので。それに対する「ベスト16を何としても(突破したい)」という思いがチームにありましたし。グループステージの戦い方、突破の仕方、そして今日の(ラウンド)16のゲームに対しては、自分としても突破したあとの今日のゲームを、チーム力を万全にする中で戦いたかった。今までの過去2回のラウンド16とは違う感覚で、選手には臨ませたかった。

そういうチームの大会に対するプランというのは、しっかりとれた中で戦えてたというのはあります。やはりまだ力が足りない、ということを見せつけられました。また4年後、今日をもってまた(次の体制に)託したいなと思います。

4年間の積み重ねと言われたが、監督がこのチームを引き受けるにあたり、前任のハリルホジッチ監督のやり方を全否定するのではなく、よい部分をしっかり残しながら自分の色を付けていったと見ているが、ご自身はどう考えるか

ハリルホジッチ監督がずっと積み上げてこられたスタイル、チームにもたらしたものは大きいと思いますし、私自身も継承するところはしないといけない。選手たちにある程度、染み付いているものありますし。ただ自分の中で、それに対してオリジナリティーとはいえませんが(苦笑)、1カ月の話なので。

まあ、何かアクセント的なもの、それを継承できるための自分なりのアプローチというものはチームに与えてきたつもりです。それは当然、ハリルホジッチ監督が伝えてきた、コンタクトの強さとか、縦への速さとか、間違いなく必要とするところでありますし、選手もそういう感覚は持っています。それに対しての自分なりの変化。それを選手が理解して、ここ1カ月取り組んでくれた成果かなと思いますけど。

今日負けてしまったということは、日本サッカー界の悲劇と思うか?

なかなか認めたくはないゲームでもあったので、そういう感覚は強くありますが、やはり敗戦はしっかり認めないといけない事実はあるので、強い失望はあります。

何人かの選手が、ベスト8に入るのが目標だと言っていた。残念ながら、そこまでは行けなかったが、非常にエキサイティングで期待上回るパフォーマンスだった。これを成功と言えるか? 言えるとしたら、その理由は?

おそらく選手も、すべての力を出し切ったゲームだったと思っているでしょうし、良いサッカーは表現できたと思います。やはり目標としていた、この試合を突破できなかったところの結果に対しては、成功とはもちろん言えることではない。このW杯の戦いを次につなげていけるかどうか、というところがサッカー界にとってこの大会の意義があるわけで。それをもって、4年後に今大会のチャレンジが成功と言えるようなサッカー界にしてほしいなと思います。

攻撃に関しては手応えはあったと思うが、最後の最後で勝ちきれなかった。日本サッカー界全体として、勝ち切るノウハウや守り切る、あるいは高さ対策といったものは次のステップアップへの鍵になると思うか?

そのとおりだと思います。攻撃に関しても、もっともっとステップアップできる部分はたくさんありますし、この1カ月の間でも選手たちの間でのポジショニングとか、ボールのスピードの変化とか、コンビネーションとか、少しずつ高まっていけば、さらにそういったチャンス、決定的が上がるとは言わないですが、チャンスは増えると思いますし、攻撃のオプションや精度も高まっていくと思う。

ディフェンスの部分も1対1、2対2の中で対応するのでなくて、今日もベルギーの両サイドをどう消して、なおかつ攻撃で出ていくか、というところも大きなポイントで。じゃあ、両サイドを長友と酒井(宏樹)が1対1で対応するのでなく、グループで対応することを増やして、ディフェンス力を個の力を消していくことができましたが、最後はそれこそ数センチ、0コンマ何秒の違いをもたれてやられてしまう。繰り返してはいることなんですが、やはりさらにグループで、人に行くのか、ボールにディフェンスするのか、というところでの対抗する必要があるとは思います。

今日もCKから2点とられて、このチームを引き受ける以前からセットプレーの失点が課題だったが、今大会での対策はどうだったのか。それから今後、日本サッカー界としてどうしていくべきか。

ポーランド戦でFKから取られて、しかもヘディングではなく足で取られたのは、相当なマーキングのミスなのか無抵抗なのか、という失点があったので。これは今シリーズ、ずっと続いていることなので、もう分析は止めようと。映像で常に繰り返し、ポジショニングだ、初動を押さえろ、オフサイドトラップで勝負する、いろいろ対応策を考えているんですが、やはりフィジカルだけではないメンタリティとか駆け引きとか。

物理的に(身長が)10センチ違う選手たちと、こういうレベルで対抗しないといけないので、あらゆる策を対応してはいるんですが、最終的には圧力をかけられて、ディフェンスの全体のポジションが川島の前の5メートル、10メートルというところに引いた中では勝てないということ。

それはわかっているんけれど、そういう状況にさせられる世界。そこで勝負させられるW杯というのがあるので。これはA代表だけでなく、下のカテゴリーも世界に行けばそういう形でやられている。われわれの中で、しっかり対抗できていても、相手の心拍数がまったくが高まっていないところでやられることほど悔しいものはない。何とかさらに対応策を考えないといけないのでしょう。FK、CKでやられるほど、選手も、さらに1点ですから。対応を考えたいなと思います。