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世界中で議論を呼んだ新ルール、フェアプレーポイントは本当に悪なのか

日本代表の西野朗監督 写真提供:Getty Images

 日本対ポーランド戦後、欧州の多くのメディアがフェアプレーポイントによる順位決定が皮肉にも「フェアでない」として否定的な見解を示している。例えばドイツ誌『シュピーゲル』は「フェアプレーポイントはサッカーと全く無関係のもの」だとして、サッカーの結果において価値を持つ唯一のものはゴールであるべきだという意見を掲載している。ビデオアシスタントレフェリー(VAR)にも未だに否定的なファンが多い保守的なドイツらしい意見だが、望ましい解決法として提案されているのは再試合と、少なくとも平等な抽選だった。多くても数大会に一度しか発生しないケースのために再試合の日程を確保することは現実的ではなく、現状ではフェアプレーポイントと抽選のどちらかを取ることになる。

 プレーと全く関係がないように思われる抽選だが、その隠れたアドバンテージとしては日本対ポーランドのような状況が生まれにくいということがある。もし0-1で敗れた場合に順位決定が抽選に持ち込まれるとしたら、日本代表は試合の最後までゴールを狙いに行っていただろう。セネガル対コロンビア戦の行方に運命を託した西野監督の「ギャンブル」はそのまま試合が終わる可能性が高いという計算に基づいたものであり、さすがに50%の確率に全てを掛けるほどギャンブル好きな監督は多くないはずだ。

 しかし実際のところ、フェアプレーポイントを撤廃すれば日本のようなプレーがなくなるわけではない。日本はフェアプレーポイントのルールがあるからプレーを止めたわけではなく、あくまで現状維持であれば突破が決まるからそのまま試合を終わらせたに過ぎないからだ。セネガルを上回る理由が得失点差であっても総得点であっても時計の針を進める行為は変わらなかったはずで、今回はたまたまそれがフェアプレーポイントだった。つまり日本のプレーと、このルールへの評価は混同されるべきではない。

 FIFAの大会ディレクター、コリン・スミス氏は日本対ポーランド戦の後、大会終了後にルールを改めて評価するとしながらも「現状では変更の必要性があるとは考えていない」と語った。理想的ではないが、フェアプレーポイントの方がまだ抽選よりもましという訳だ。そして、その考えはおそらく正しい。フェアプレーポイントがサッカーと関係ないというのであれば、抽選で勝者を決めるのはさらにサッカーからかけ離れた行為だからだ。確かにVARと同様に完璧なルールではないかもしれないが、今回の非常に稀なケースを理由に抽選の方がフェアだと結論を出すのはあまりに過剰な反応だと言えるだろう。

著者:マリオ・カワタ

ドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC

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