乾貴士の変貌への驚き
長谷部の能力の高さはフランクフルトファンが誰よりも理解するところだが、彼らを驚かせたのはセネガル戦でヒーローになった乾貴士だ。スペインに渡った2015年までの3シーズンをフランクフルトで過ごした乾は、移籍初年度こそリーグ戦で6ゴールを決める貢献を見せたが、その後は2年間で1得点に終わっていた。自身を失い、当初の創造性を発揮できなくなった姿を覚えている当地のファンにとって、スペインで輝きを取り戻した現在の乾は別人のように見えることだろう。
『フランクフルター・ルントシャウ』も当時のアルミン・フェー監督が精神的なもろさを指摘した乾の変貌ぶりを驚きと共に伝え、セネガル戦の中継でもドイツ時代に見られることの少なかったゴールに直結するプレーの多さが指摘されている。また『キッカー』は1対1の強さとパスの正確性を評価し、セネガル戦のマン・オブ・ザ・マッチに乾を選出した。大迫のブレーメンと同様、W杯前に移籍話をまとめた来季の新天地ベティスはその活躍に満足していることだろう。
日本代表の成長を支えるブンデスリーガ
在籍選手の多さからも明らかなとおり、ドイツは欧州主要リーグの中で最も日本人選手の評価が高い。もし「ブンデスリーガパワー」によって日本がポーランド戦でも好調を維持しベスト16を果たすようなら、その傾向は更に強まるだろう。年齢やポジションを考慮すると現在の代表選手には新たにドイツクラブのターゲットとなる選手は多くないが、今回のW杯メンバーから漏れた若手なら話は別だ。
オランダでブレイクした堂安律やベルギーで実績を残す久保裕也、英国の労働許可取得のめどが立たない井手口陽介などには既に目をつけているクラブがあるだろうし、中島翔哉は具体的なクラブ名とともにドイツ行きの可能性が報じられている。また鎌田大地や関根貴大の移籍からも分かるようにブンデスリーガクラブは常にJリーグの若手選手にも目を光らせており、日本代表の半数がドイツを拠点とする状況は当面は変わらないだろう。そして今回のW杯での大迫や長谷部、香川真司と言った選手たちの逞しさを見る限り、ドイツとの友好関係が日本サッカーに多大な好影響を与えていることも間違いない。
著者:マリオ・カワタ
ドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC
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