戦術と若手育成に定評
60歳のファーブルは、近年のドルトムントの監督の中では最も経験が豊富だ。母国スイスで90年代に指導者としてのキャリアをスタートさせ、チューリヒを経て2007年にヘルタ・ベルリンの監督へとステップアップ。2011年からの4年半はボルシア・メンヒェングラートバッハを率いて、CL出場権獲得を含む好成績を収めた。2年前にフランスのニースに渡ると、こちらでも初年度にチームを近年の最高成績となる3位に導いた。
ドルトムントも当然ファーブルの実績を高く評価しており、昨年の時点でトゥヘルの後釜として契約に動いていたが、当時はニースが放出を拒んでいた。ミヒャエル・ツォルクSDは公式声明の中でファーブルの監督就任を「今夏のクラブの再出発において重要な位置を占めている」としている。
クラブが今夏を「再出発」と表現する通り、混乱の続いたシーズンの後でファーブルが解決すべき課題は多い。短期間での指揮官交代を繰り返したチームに確固としたスタイルをもたらすことは、間違いなくその一つだ。戦術のエキスパートとして知られるファーブルは、十分にその要件を満たしている。
またファーブルは若手の育成にも定評がある。ボルシア・メンヒェングラートバッハ時代には現在ドルトムントでプレーするマルコ・ロイスを指導しており、ドイツ代表のアタッカーに最も大きな影響を与えた指導者とも言われている。クリスチャン・プリシッチやジェイドン・サンチョ、アレクサンデル・イサクといった若き才能はその恩恵を受けることができるはずだ。
しかしファーブルが成功を収められるかの一番の鍵となるのは、選手、フロント、そしてサポーターを含むクラブ全体に対して強い求心力を発揮できるかだろう。ドルトムントにおいて監督は「監督以上の存在」と言われ、それをまさに体現したのがクロップだったが、現在まで後継者たちはその役割を完全に果たすことはできなかった。ドルトムントがバイエルンを脅かす存在として復活を遂げるためには、スイス人指揮官がスター選手たちをまとめ上げ、クラブに再び一体感をもたらす真のリーダーとして君臨することが絶対条件になる。
著者:マリオ・カワタ
ドイツ在住のフットボールトライブライター。Twitter:@Mario_GCC
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