楽天の世界戦略としてのヴィッセルの国際的ブランディング
これだけの投資を可能にした背景には、DAZNの存在があるのは間違いないだろう。巨額の放映権料を支払う彼らがJリーグを国内外でより魅力的なコンテンツにしたいのは当然であり、クラブとしても成功した場合の大きな見返りがあるからこそ、積極的に投資することができる。ただ全てのJ1クラブがこうした戦略を取れるわけではなく、そこにはヴィッセルの親会社である楽天の世界戦略が大きく関わっている。
サッカー界における楽天の大型契約はポドルスキやイニエスタが初めてでなく、世界中の多くの人々は昨年バルセロナのユニフォームに胸スポンサーとしてその名前が現れたことで、「Rakuten」を知ることになった。ヨーロッパではまだそのサービス自体が広く知られているわけではないが、世界的なステータスを飛躍的に高めたことは想像に難くない。ドイツではバイエルン州のバンベルクに子会社を置いているが、イベントの際には町の中心の広場にブースを設けるなど、日本ではおなじみのロゴの認知度は徐々に上昇している。
そして楽天とヴィッセル神戸の国際的なブランディングという点で、昨年夏に加入したポドルスキは理想的なターゲットだった。冒頭で触れたドイツ国内での注目の高さは、ポドルスキが単なる有名選手ではなく国を代表するスターだからこそだ。ドイツ代表としての実績だけでなくそのキャラクターで一般の人々からも愛される「ポルディ」は、現在も国内で広告に起用され、帰国すればメディアから引っ張りだこになる。ピッチ上でポドルスキよりも結果を出せる選手はいるかもしれないが、欧州のサッカー大国の一つで彼ほどの影響力を持つ選手はそう多くない。
イニエスタは同様の効果をスペインだけでなく、世界各国にまで広げるかもしれない。移籍のニュースだけでも、何百万人という人々が「ヴィッセル神戸」の名前を目にした事だろう。現在ドイツ版の楽天のショッピングサイトではポドルスキの背番号と名前の入った神戸のユニフォームを購入できるが、いずれはイニエスタの名前入りユニフォームも欧州各国から注文が可能になるはずだ。
またDAZNやソーシャルメディアに象徴されるように、現在サッカーを取り巻くメディアの環境はかつてJリーグで大物外国人選手が多くプレーした90年代とは大きく異なる。ラウドルップが神戸でゴールを決めても、瞬く間に世界中でニュースとして報じられることはなかった。しかし今はどうだろう。イニエスタが楽天のロゴが入ったえんじ色のユニフォームでゴールを決めれば、その動画はすぐに世界のサッカーファンの目に留まることになる。
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