ラ・リーガ レアル・ベティス

スペインのローカルダービーを巡る旅:セビージャ・ダービー編

セビリアの理髪師

オペラ『セビリアの理髪師』の一場面 写真提供:Getty Images

 セビージャから生まれたベティス

「血は赤いか、それとも緑か」

 こんな冗談をこの街で聞けば、それは医学的な話ではなく、フットボールの話であると理解しなければならない。セビリアに本拠地を置くセビージャFCとレアル・ベティスのシンボルカラーが赤と緑であることから、こんな言い争いが始まったのである。

 この2つのクラブの関係は、ちょうどイタリアはミラノの2クラブの関係に似ている。ミランの経営方針に反対した内部の幹部たちが、分離独立しインテルが設立された。彼らはもともとひとつのクラブであった歴史を持っているのだ。それと同じように、セビージャの経営方針に反対した内部の人間が分離独立して設立されたクラブが、レアル・ベティスである。

 この街を舞台にしたロッシーニのオペラ『セビリアの理髪師』で、アルマビーバ伯爵がわざわざ地位や資産のない人物に扮して愛の告白をし、ロジーナがそれを愛したようなことは、その時代よりも階級意識が薄まった現代では描かれもしない物語だろう。

 しかし、フットボールの世界ではそのクラブを支持してきた“層”に誇りを持つ文化が少なからず残っている。セビージャは富裕層に支持され、労働者階級の選手と契約しなかった。これが原因で内部分裂が起き、ベティスが設立された。この歴史が示すように、ベティスは労働者階級に支持されてきたクラブだ。

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