イタリア代表を長きにわたって支え、ユベントスでも数多くのタイトルを獲得してきたジャンルイジ・ブッフォンが17日に記者会見を開き、現役からの引退を発表した。今回は彼に敬意を表し、これまでの偉大なキャリアを振り返る。
伝説の誕生
1991年にパルマのエルメス・フルゴーニGK育成コーチ兼スカウトに見いだされ、同チームの下部組織に加入。1995/1996シーズンでは、下部組織加入からわずか4年でネビオ・スカラ監督によって、パルマのトップチームに昇格した。
11月19日、17歳にしてファビオ・カペッロ監督率いるミラン戦でセリエA初出場。同デビュー戦でスーパーセーブを連発し、0-0の引き分けに貢献した。翌シーズンは18歳ながら守護神として活躍。リリアン・テュラム、ファビオ・カンナヴァーロらと結成した強固な守備陣を武器にチームはセリエA2位の躍進を見せた。
数多くのクラブタイトル
パルマ在籍時の1998/1999シーズン、自身初となるコッパ・イタリア優勝、UEFAカップ優勝、イタリア・スーパーカップ優勝を達成。
ユベントス移籍後もクラブに次々とタイトルをもたらしている。セリエA優勝9回(セリエB1回)、コッパ・イタリア4回、イタリア・スーパーカップ5回を成し遂げている。
セリエAのスーパーマン
多くのサポーターから愛されるブッフォンは「スーパーマン」との愛称を持つ。卓越した技術と恵まれた体躯、GKの役を全うするために生まれてきたかに思えるほど、完璧で”スーパー”な選手だ。
だが、愛称の由来は別に存在する。1997年のセリエAインテル戦。当時世界最高の選手ロナウドのPKをストップしたあと、パルマ・サポーター達がブッフォンにスーパーマンのTシャツを着せたフラッグを掲げた。その2年後、コッパ・イタリア優勝を果たした試合後、ブッフォン自身がスーパーマンのTシャツを着て優勝を喜んでいた。これがスーパーマンの誕生秘話だ。
2016年、ブッフォンのパフォーマンスが一時低迷を迎えた時でも、ユベントスのサポーターは批判せず。「スーパーマンだって時にはただのクラーク・ケントに過ぎない。ジジ(ブッフォンの愛称)はいつだって俺達のスーパーヒーローだ」と絶大な信頼を示して見せた。
圧倒的な記録
ブッフォンが偉大さの片鱗は記録を見ればすぐに理解できる。セリエA歴代2位となる629試合に出場。974分間の史上最長無失点記録。史上最多タイとなるリーグ優勝8回と燦然たる記録を残している。
FIFA最優秀選手賞GK部門3回、UEFA年間最優秀選手GK部門2回、GK史上初のゴールデンフット賞受賞などを受賞。その他にもレフ・ヤシン賞、UEFAチーム・オブ・ザ・イヤー4回、FIFproワールドイレブン3回、セリエAベストイレブン4回など「史上最高GK」の栄誉を何度となく受賞している。
ユベントスの象徴
ユベントスがカルチョ・スキャンダルによってセリエBへ降格した際も、クラブへの忠誠を誓った。世界トップレベルの選手が丸1年、2部リーグでプレー。翌シーズンもUEFAチャンピオンズリーグ出場権を得られない状況で残留したのだ。
当然、サポーターから最も愛される選手の一人である。
最も高価なゴールキーパー
ブッフォンは2001年にパルマからユベントスへ移籍。GKとして史上最高額の移籍金5230万ユーロ(当時のレートで約56億円)で加入した。
当時、GKとしては破格の移籍金を支払ったユベントスに懐疑的な見方をする専門家が多かったが、「サッカーをよく理解していない者の戯言」とブッフォンは反論。その後の活躍を見れば、どちらが正しかったのか明白だろう。
ワールドカップ優勝
2006年ドイツFIFAワールドカップでは、大会7試合を通じて2点しかゴールを許さず(1点はクリスティアン・ザッカルドのオウンゴール、1点はジネディーヌ・ジダンのPKからの失点)試合の流れの中でゴールを割られることはなかった。
さらに、W杯史上4番目の長さとなる460分連続無失点という記録を達成。イタリアをW杯優勝に導き、最優秀ゴールキーパーとしてレフ・ヤシン賞を受賞した。
永遠の夢
世界最高のGKとして数え切れないタイトルを獲得してきたブッフォン。だが、UEFAチャンピオンズリーグのトロフィーだけは縁がない。
過去3回決勝に進出。タイトルは手の届くところにあった。2002/2003シーズン、ミランとのでPK戦の末敗北。2014/2015シーズンはバルセロナに1-3と敗戦。昨シーズンも決勝進出するもレアル・マドリードに1-4と敗れている。自身もCL優勝が最大の夢と語っている。しかし、終にそれが叶うことはなかった。
ブッフォンの魅力とは
ブッフォンが偉大なGKたる所以はタイトル獲得数だけでは計り知れない。これほど多くのサポーター、選手から愛されているのは、その人柄によるところが大きいだろう。
多くの栄誉を手にしている彼だが、いまだかつて謙虚さを失ったことはない。「ブッフォンとその他GKとの違いは何か?」と問われた元ミランGKジョバンニ・ガッリは「彼の性格、それこそがGKにとって最も重要なものだ」と話し、双璧をなしたGKカシージャスも「僕の世代の人間なら誰しもブッフォンのようなGKになりたいと思ったはずだ」と、言葉を残している。
常に真摯にインタビューへ対応し、冷静さを失わない。そして、周囲への感謝。パルマ、ユベントスへのクラブ愛を知るサッカーファンであれば、その偉大さが理解できるのではないか。
ユベントス退団
17日の日本時間18:30にアリアンツ・スタジアムで公式記者会見を開いたブッフォン。4月12日に行われたCL準々決勝2ndレグの試合後に、引退をほのめかすコメントを残すなど、引退は決定的とみられていた中で行われた記者会見だった。会見の中で「土曜日の試合が最後になる」と語ったブッフォン。ホームでのエラス・ベローナ戦で、どのようなパフォーマンスを見せてくれるのか、期待しよう。
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