ワールドカップ 代表チーム

オリバー・カーンも驚嘆した史上最強の日本代表、西野ジャパンの功績

著者:マリオ・カワタ

 ベルギー代表に対する日本代表の戦いは、衝撃的だった。グループステージ最終戦の最後の10分間が一部から批判を浴びた際には、ベスト16進出という結果と違いその些細な出来事は数年後には忘れられるだろうと思ったものだが、実際にはわずか4日間で忘れられてしまった。ベルギー代表といえば2002年ワールドカップで日本が史上初めての勝ち点を得た相手だが、それから16年後の試合はまた違った意味で日本サッカー史に残るマイルストーンになったと言える。

 私はドイツ公共放送の中継で試合を見ていたが、スタジオで解説を行っていたオリバー・カーンを含む3人は一様に日本のパフォーマンスに感銘を受けていた。試合後は「ベルギーが劇的な逆転勝利を収めたが、それよりもとにかく日本が素晴らしかった」と勝者そっちのけで、戦前の予想では圧倒的に不利だったサムライブルーのプレーを興奮気味に称えている。カーンは劇的な展開、強豪の敗退が相次ぐ大会の流れにも触れつつ「信じられない」とその戦いぶりを称えた。

 特に高い評価を得たのはその洗練された戦術と規律だ。守備時は5-2-3、攻撃には3-2-5のフォーメーションを形成したベルギーに対し、4-4-2を基本とし4-2-4そして4-2-3-1へと状況に応じて柔軟に形を変え、高い位置から圧力を掛けた日本の戦術は非常にインテリジェントかつアグレッシブで、「ワールドクラス」と形容されていた。相手の3バックに対して非常にクレバーに対応し常にボールを外に追いやったことで、ベルギーは思うように試合に入っていくことができなかった。

 そして日本は11人が決してサボることがなかった。51分、ケビン・デ・ブライネは味方との呼吸が合わず日本陣内でパスを受けられずにボールを失った。そこから日本が攻め込むにしたがってデ・ブライネはゆっくりと下がっていくが、全く守備に参加する素振りは見せず最終的には乾貴士のシュートを近くから見送っている。それはこの試合の日本とベルギーと違いを象徴するシーンのひとつだった。

 同時にカーンは「ベルギーが油断していたとも思わない」と言っている。「単純に日本が素晴らしいメンタリティで試合に臨み、ベルギーを驚かせたのだ」と。

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