
日本人選手にとって海外移籍の主戦場は欧州が中心だが、ブラジルやアルゼンチンといった南米リーグも依然として有力な選択肢だ。しかし近年は、アジア各国リーグの資金力向上により、“年俸アップを実現できる市場”としての価値が急速に高まっている。特に東南アジアや南アジアでは外国人枠の拡大も進み、日本人選手の需要は年々上昇している。
ここでは、J2・J3からでも年俸アップが狙えるシンガポール、タイ、マレーシア、インドネシア、インドの5リーグに焦点を当て、それぞれの給与水準、特徴、成功条件を整理する。

シンガポール・プレミアリーグ
“貯金しやすさ”はアジア随一。税制と安定環境が魅力のリーグ
FIFAランキング151位/AFCクラブコンペティションランキング15位
63の島から形成され、総面積は東京23区とほぼ同じ。約611万人(うち外国人約191万人)が暮らす国がシンガポールだ。
シンガポール・プレミアリーグは、2025/26シーズンは8クラブで構成。2024/25シーズンから秋春制を導入しており、クラブ規模は小さいながらも、それぞれが独自のホームスタジアムを持つ。国際都市らしく外国人選手の比率が高く、多国籍なリーグとなっている。
日本人選手の年俸は主力で1,000万~3,000万円が相場。トップクラブでは外国人選手が4,000万円以上を受け取るケースもあり、J2・J3の平均年俸を大きく上回る水準だ。背景にはクラブの資金力に加え、日本人選手への信頼の高さがある。外国人枠の拡大も進み、日本人の需要は増加傾向にある。
実例としては、元日本代表のMF小林祐希が加入したタンピネス・ローバーズFCが挙げられる。同クラブにはDF山下柊哉、MF風間宏矢、FW東川続、DF鷲見星河、DF吉本武と複数の日本人選手が在籍し、ACL2でも結果を残した。また、アルビレックス新潟シンガポールでは、元U-20日本代表候補のMF飯田晃明のような若手が主力として活躍するなど、日本人のプレースタイルはリーグ内で広く浸透している。
求められるのは、戦術理解力と技術の高さ、そして規律あるプレーだ。特にボランチや攻撃的MFは評価されやすいポジションといえる。
生活面では物価こそ高いものの、所得税が低く、クラブが住居を提供するケースも多いため、実質的な可処分所得は高い。支出を抑えられれば、短期間で貯蓄を増やすことも可能であり、“稼げるうえに貯まる”リーグの代表格だ。
タイ・リーグ1
東南アジア最高クラスの年俸水準。“1億円級”も現実的な高待遇リーグ
FIFAランキング95位/AFCクラブコンペティションランキング7位
1996年に創設され、2015年まで「タイ・プレミアリーグ」として開催されていたタイ・リーグ。現在は1部(T1)16クラブ、2部(T2)18クラブで構成されている。2025/26シーズンからは外国人登録枠が10人、同時出場は7人までに拡大され、リーグ全体の競争力も高まっている。シーズンは8月から5月にかけて行われ、優勝クラブにはACLE出場権が与えられるなど、アジアカップ戦への道も整備されている。
日本人選手の年俸は1,000万~5,000万円が相場だが、クラブによっては月給5万ドル(約800万円)を超え、年俸換算で1億円近くに達するケースもある。背景には大富豪によるクラブ経営と潤沢な資金力があり、Jリーグと同等、あるいはそれ以上の待遇が提示されることも珍しくない。
実際に、元年代別日本代表のMF野津田岳人やMF高木善朗が活躍しており、日本人選手の評価は高い。また、石井正忠監督がクラブやタイ代表を率いた実績もあり、日本人指導者・選手への信頼はリーグ全体に浸透している。
2025/26シーズンにはFW久乗聖亜がバンコク・ユナイテッドへ移籍し結果を残しているほか、元FC東京のMF三田啓貴もナコーンラーチャシーマーFCで主将を務めるなど、日本人選手がチームの中心を担うケースも増えている。
求められるのは、組織的な守備と豊富な運動量、そして戦術理解力だ。ピッチ上でゲームをコントロールできる“監督型”の選手は特に重宝される。
生活面では、バンコクの物価は日本に近いものの、クラブが住居や車を提供するケースが多く、実際の支出は抑えやすい。高年俸と生活サポートが両立する点も、タイ移籍の大きな魅力と言えるだろう。
コメントランキング