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Jリーグにおける大都市有利のホームグロウン制度に意味はあるのか

Jリーグ 写真:Getty Images

Jリーグは、2025シーズンの各クラブにおけるホームグロウン(HG)選手人数を4月22日に発表した。ホームグロウン(HG)制度は、自前で育成された選手をトップチームに登録する制度で、Jリーグでは2019年から設けられている。現在J1の各クラブは4人、J2とJ3は2人以上の育成選手をトップチームに登録する必要がある。

今回公開された数は、第1登録ウインドー終了の3月26日時点のもので、最多はFC東京の15人。続いて鹿島アントラーズとサンフレッチェ広島が13人。柏レイソル12人、RB大宮アルディージャと川崎フロンターレが11人、東京ヴェルディと松本山雅が9人となっている。

一方で、規定人数未達は14クラブ(J1:ファジアーノ岡山、J2:いわきFC、水戸ホーリーホック、藤枝MYFC、J3:ヴァンラーレ八戸、福島ユナイテッド、栃木シティ、ザスパ群馬、SC相模原、
FC岐阜、FC大阪、奈良クラブ、高知ユナイテッド、テゲバジャーロ宮崎)にも達した。

HG選手登録が規定数に満たない場合は、翌年のプロA選手「25名枠」からHG選手の不足人数分を減ずるという罰則規定があるが、2026年2月からプロ契約のA・B・C区分が撤廃されるため今回は罰則がないようだ。

ここでは、JリーグにおけるHG制度の欠陥について、ひいてはその根拠となっているホームタウン制度の是非について考察する。


プレミアリーグ
プレミアリーグ 写真:Getty Images

Jリーグにおけるホームグロウン制度はナンセンス?

HG選手の定義とは「12歳の誕生日を迎える年度から21歳の誕生日を迎える年度までの期間において、特定のJクラブの第1種、第2種、第3種または第4種チームに登録された育成期間の合計日数が990日(Jリーグの3シーズンに相当する期間)以上であること」と示されている。

この制度は、クラブが自前で育成した若手選手をトップチームに登録することを奨励する意味で導入されたが、元々はイングランドのプレミアリーグや米国メジャーリーグサッカー(MLS)、UEFA主催大会で用いられたルールを“輸入”したものだ。極端な話をしてしまえば、イングランドを除く欧州において、UEFA主催のカップ戦に出場しないクラブであれば、無視しても構わないルールなのだ。

このルールをそのままJリーグで採用された意味と考えられるのは、「ちゃんとユースとジュニアユースも強化しなさい」というメッセージが込められていると理解できる。しかし、イングランドでHG選手として認められるのが「イングランド内であれば地域は問われない」のに対し、Jリーグでは事実上「クラブに12歳から21歳までの間で990日間在籍した選手と下部組織出身選手」に限定されている。

このルールでは、大都市が有利となることは明々白々で、実際、JクラブのHG選手トップは前述の通りFC東京の15人。他で10人を超えているのは鹿島(13人)、柏(12人)、川崎(11人)、大宮(11人)。育成がクラブの生命線となっている広島(13人)以外はすべて関東圏のクラブだ。一方、いわき、藤枝、八戸、福島、栃木C、相模原、FC大阪、高知、宮崎に至っては「0人」である。

トップチーム強化だけで精一杯のクラブに対し、「スカウトしてきた若手選手、あるいは下部組織の選手を起用しなさい」と迫るのは厳しすぎやしないか。

ただでさえ少子化社会の中、有望なサッカー少年を下部組織に入団させるだけでもひと苦労だろう。才能ある少年がより高いレベルを求めて、県外の強豪私立高サッカー部に流出してしまうケースもある。分母(=少年サッカー人口)に圧倒的な差があるのだから、それを1つの物差しで比較し「ルール不遵守」と断じるのはナンセンスとは言えないか。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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