日本女子プロサッカーリーグ(WEリーグ)2023/24第14節の全6試合が、4月14日に各地で行われた。同リーグ首位の三菱重工浦和レッズレディースは、本拠地浦和駒場スタジアムでノジマステラ神奈川相模原と対戦。最終スコア2-0で勝利している。
同リーグ2位INAC神戸レオネッサが今節日テレ・東京ヴェルディベレーザと0-0で引き分けたため、首位浦和との勝ち点差が4に拡大(浦和38、神戸34)。浦和は神戸よりも消化試合数がひとつ多い現状だが、同リーグ史上初の連覇へ前進した(浦和15試合、神戸14試合消化)。
首位を堅持している浦和の戦術的特色は何か。ここでは第14節相模原戦を振り返るとともに、この点について解説する。相模原戦の現地取材で得た栗島朱里と水谷有希の浦和両MF、及び同クラブFW島田芽依の試合後コメントも併せて紹介したい。
浦和vs相模原:試合展開
前半27分、浦和がハーフウェイライン付近でフリーキックを得ると、左サイドから攻撃を仕掛ける。水谷が繰り出したパスをMF柴田華絵と島田がスルーし、その後FW清家貴子からMF塩越柚歩にボールが渡ると、塩越がペナルティエリア左隅からシュートを放つ。自身から遠いほうのサイドネットを狙ったこのシュートがゴールマウスに吸い込まれ、浦和に先制点がもたらされた。
キックオフ直後から相模原のロングボール攻勢や自陣からの速攻に晒されていた浦和は、このゴールを境に試合を掌握。後半15分には塩越のコーナーキックに清家がヘディングで合わせ、自身が持つWEリーグ最長連続得点記録を8試合へ更新した。
その後も守備隊形をコンパクトに保った浦和は、相模原に効果的なパス回しをさせず。リーグ7連勝で首位の座を守っている。
攻撃配置の不具合
[4-4-2]の基本布陣でこの試合に臨んだ相模原は、自陣後方からのロングボールで浦和のハイプレス(最前線からの守備)を回避。基本布陣[4-2-3-1]の浦和は持ち前のハイプレス、及び敵陣でのボール奪取からの速攻を封じられる展開となったが、石川璃音と長嶋玲奈の両DF(2センターバック)を中心に相模原のロングボール攻勢に対処した。
前半途中から浦和がボールを保持し始めたものの、攻撃配置が整わない場面がちらほら。2ボランチの一角、栗島がこの日もセンターバック石川とMF遠藤優(右サイドバック)の間へ降りパス回しの起点となろうとしたが、遠藤の立ち位置が低すぎたためパスルートが開通せず。また、遠藤が高い位置をとっても栗島がロングパスを繰り出さない場面もあった。
功を奏した栗島・遠藤の修正力
相模原戦終了後、栗島は筆者の質問に回答。右サイドバック遠藤と声をかけ合い、攻撃配置の不具合を速やかに解決したことを明かしている。遠藤と栗島の問題共有力の高さ、そして両者の試合展開を読む眼の確かさが窺えるコメントだった。
ーいつものように栗島選手がセンターバックとサイドバックの間へ降りて攻撃の起点となろうとしていましたが、右サイドバック遠藤選手が相手最終ラインの背後を狙える状況でありながら、そこにパスが出ない場面がありました。どういう心境でそのプレー選択に至りましたか。
「多分、そのシーンはシンプルに判断ミスだと思います。優と声をかけ合ったところ、本人曰く中途半端なポジションをとっている(高い位置をとれていない)自覚はあったみたいです。そうしたら、『1回思い切って行くわ(相手最終ラインの背後へ走る)』と言ってくれて。そこへのパスが1回繋がってからは、自分もセンターバックとサイドバックの間へ降りやすくなりました」
「この試合で初めてセンターバックとサイドバックの間へ降りたときに自分がトラップミス(ボールコントロールミス)をしてしまい、うまくパスが繋がりませんでした。このミスからそこへうまく降りることができなかったのですが、『高い位置をとれそうなときは行くよ(最終ライン背後を狙うよ)』と優が言ってくれて。前半途中からは思い切ってセンターバックとサイドバックの間へ降りることができましたし、相手最終ラインの背後も狙えました」
ー私も遠藤選手の立ち位置が低い、もう少し高いほうが良いと思っていました。遠藤選手の俊足に対抗できる選手は、WEリーグになかなかいないですよね。仰る通り、前半の途中から立ち位置が良くなりました。
「はい。優が試合中に伝えてくれたので修正できました。今日の試合展開であれば、裏をとれるならとったほうが良い(最終ラインの背後を狙えるならそうしたほうが良い)と思っていたので。裏をとって攻めきれるならそれで良し。そこから自分たちの時間にするのなら(2次攻撃を仕掛けるのであれば)、敵陣でボールを回収すればいい。なるべく相手陣地でプレーしたいという気持ちもありました」
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