
日本人選手の欧州移籍が活発化する中、近年は20代半ば以降に海外挑戦を果たす“遅咲き”のケースも目立ち始めている。ここでは、アビスパ福岡から今冬、ドイツ・ブンデスリーガのザンクトパウリへ完全移籍した日本代表DF安藤智哉(移籍時26歳)を中心に取り上げる。
安藤はJ3からJ2、J1へと段階的にカテゴリーを上げ、日本代表デビューを経て欧州移籍を実現させた。この移籍は、国内で実績を積み上げた選手にとって新たなキャリアパスとなり得るのか。まずは安藤の歩みを振り返り、その成長過程を整理する。その上で、伊東純也(KRCヘンク)や大橋祐紀(ブラックバーン・ローバーズ)といった20代半ば以降に欧州へ渡った例と比較し、共通点や成功要因、課題を分析する。若手中心とされてきた従来の欧州移籍トレンドに対し、こうした“完成度重視型”の挑戦がどこまで現実味を帯びているのかを探っていきたい。
段階的昇格で築いた”雑草型”キャリア
安藤智哉は1999年1月10日、愛知県豊田市生まれ。190cmのサイズを誇るセンターバックで、空中戦の強さと対人守備の安定感を武器とする。ビルドアップにも関与でき、状況に応じてサイドバックでの起用にも対応可能だ。
岡崎城西高校から愛知学院大学へ進学。いわゆる全国屈指の育成ルートを歩んできた選手ではないが、大学で着実に力を伸ばし、2021年にJ3のFC今治でプロキャリアをスタートさせた。
2シーズンで出場機会を重ねると、2023年にJ2大分トリニータへ移籍。主力として評価を高め、対人守備の強さと空中戦能力で存在感を示した。さらに2025年、J1アビスパ福岡へステップアップ。J1初年度からリーグ戦で安定したパフォーマンスを披露し、同年には日本代表デビューも果たしている。
J3からJ2、J1、そして代表へ。カテゴリーを一つずつ上げながら実績を積み重ねてきた点こそが、安藤のキャリア最大の特徴だ。若年層で海外へ渡るケースとは異なる、国内で完成度を高めたうえでの欧州挑戦。そのプロセス自体が、今後の一つの指標になり得る。
ブンデス移籍の背景と詳細
安藤のザンクトパウリへの完全移籍は、2026年1月1日に福岡から発表された。契約期間は非公表。移籍金も公式には明かされていないが、現地報道では約100万ユーロ前後と伝えられている。契約満了が近いタイミングでの移籍だったことを踏まえれば、金額は抑えられた可能性がある。それでも、いわゆる“ゼロ円移籍”ではない点は重要だ。
福岡での継続的な出場と日本代表での起用が評価を高め、欧州クラブの関心を集めた。ブンデスリーガ1部のザンクトパウリは残留を見据えた補強を進める中で、即戦力として安藤を獲得。クラブには藤田譲瑠チマ、今冬加入の原大智ら日本人選手も在籍しており、適応面の環境も整っている。
安藤はクラブ公式メディアで「ブンデスリーガへの移籍は自分にとって重要なステップ。今が適切なタイミングだと感じている」とコメントした。
190cmのサイズを生かした空中戦と対人守備の強さに加え、最終ラインからのビルドアップに関与できる点も評価の対象となった。守備専業型ではなく、攻守両面で計算できるセンターバックであることが、獲得の背景にある。
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