
3期目で顕在化する構造問題1:ハラスメント
野々村氏が3期目を迎えるJリーグは、環境面で厳しさを増している。秋春制移行に伴う雪国クラブへの配慮という制度的課題に加え、クラブ内部でのハラスメント問題の表面化、そして新スタジアム建設を巡る深刻な資金難と、リーグの根幹に関わる問題が同時進行で噴出している。
ハラスメント問題が明るみに出た町田ゼルビア、アビスパ福岡のケースを見ても、野々村氏自身が前面に立ち、明確な見解や方針を示したという報道は確認できない。Jリーグを運営する「日本プロサッカーリーグ」は、2012年に公益社団法人へ移行し、税制上の優遇を受ける立場にある。こうした不祥事を“クラブ内部の問題”として処理し続ければ、過去に不祥事が同時多発し、公益法人取り消し寸前まで追い込まれた日本相撲協会と同様のリスクを孕むことを、リーグとして自覚すべき局面に来ている。

3期目で顕在化する構造問題2:スタジアム基準
また、Jリーグが抱える構造的課題の中でも、とりわけ深刻なのがスタジアム問題だ。野々村氏に加え、JFAの宮本恒靖会長、森保一日本代表監督も一貫してサッカー専用スタジアム建設の必要性を訴えてきた。しかし、その理想は多くのJクラブ、そして自治体にとって現実的な負担としてのしかかっている。
象徴的なのが、モンテディオ山形の新スタジアム計画である。1万5,000人規模、2028年竣工を目指していた同計画は、総工費約158億円のうち、約50億円の資金調達が困難であると報じられた。クラブの将来像を描くための投資である一方、地方クラブにとってその金額は、経営規模を大きく超える重荷となっている。
さらに波紋を広げたのが、ブラウブリッツ秋田を巡る一件だ。最小5,000人、最大1万人規模という現実的なスタジアム構想に対し、Jリーグ幹部から「あまりにも志が低い」との発言があったと報じられ、秋田市長が「常識がなさすぎる」と強く反発する事態に発展した。後にこの発言は単なる認識の行き違いと整理されたが、リーグと自治体の間に横たわる価値観の乖離を浮き彫りにした出来事だった。
このスタジアム基準の不均衡は、一般家庭に例えると分かりやすい。年収650万円(秋田のクラブ売上約6億5,000万円)の家庭に対し、1億5,000万円の豪邸(新スタジアム建設費を約150億円と仮定)を建てるよう求めているのと同義だ。しかも、その資金の多くを自治体に依存しようとしている点が、批判を招く大きな要因となっている。
野々村氏は、宮本会長とともに各地を回り、スタジアムの意義を訴えてきた。だが、その姿勢は一部から“おねだり行脚”と揶揄され、「税リーグ」というレッテルをさらに強める結果にもなっている。既に新スタジアムを実現したクラブへの配慮を理由に、基準緩和に踏み切れない姿勢は、前例を重んじる“お役所体質”と映っても不思議ではない。
Jリーグが今後も全国60クラブ体制を維持し、事業としての持続可能性を確保するのであれば、スタジアム基準は「理想像」ではなく、「各クラブの経営実態」に即した形へと再設計されるべきだろう。基準を守るためにクラブが疲弊していく構造は、本末転倒と言わざるを得ない。
「変えない公平性」か、「変える責任」か
3期目を迎える野々村氏に突きつけられているのは、「変えないことによる公平性」ではなく、「変えることによる未来への責任」である。スタジアム基準の見直しに踏み込めるかどうかは、3期目の評価を大きく左右する試金石となるだろう。
野々村氏の功績は確かに存在する。しかし、3期目を迎えるJリーグは「成長の次元」そのものが問われる局面に入った。改革を掲げるだけでなく、不都合な課題に正面から向き合えるか。野々村体制の3期目は、単なる続投ではない。Jリーグが「成長を語るリーグ」であり続けられるのか、それとも「成長の歪みを放置したリーグ」と評価されるのか。その分水嶺に、いま立たされている。
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