若手選手 高校サッカー

亡き仲間と共に…。奈良育英、想いを背負って掴んだ全国1勝【高校サッカー選手権】

奈良育英高校 写真:Yusuke Sueyoshi

2025年12月28日に開幕した第104回全国高校サッカー選手権大会。5年連続18回目の出場を果たした奈良育英高校(奈良県)は、特別な想いを胸に今大会へ臨んでいた。

遡ること2025年7月。新チームのエースとして活躍していたMF森嶋大琥さん(3年)が、白血病のためこの世を去った。仲間の悲報に包まれる中、チームはさらに大きな悲劇に直面する。翌8月、7月下旬に行われた全国高校総体にもメンバー入りしていたDF東愛流さん(2年)が、不慮の事故で亡くなったのだ。

立て続けに仲間を失った衝撃は大きく、事故直後には、あまりのショックからサッカーに向き合えなくなった選手もいたという。それでも奈良育英イレブンは亡き仲間の想いを背負い、前を向いて歩みを進めてきた。

ここでは、特別な覚悟をもって今大会に挑んだ奈良育英の戦いの軌跡と、1年時から全国大会のピッチを踏み続けてきた主将GK内村篤紀(3年)に訊いた大会までの歩みを紹介していく。


奈良育英高校のベンチ 写真:Yusuke Sueyoshi

亡き2人に捧げた1勝

2025年12月29日、5大会ぶりの初戦突破を狙う奈良育英は、過去4度のベスト4進出を誇る強豪・矢板中央高校(栃木県)とゼットエーオリプリスタジアム(千葉県)で初戦を戦った。

試合は16分、奈良育英が獲得したコーナーキック(CK)からMF西村優士(3年)が頭で折り返し、FW建部皓介(3年)がヘディングで合わせる。そのこぼれ球をMF横田陽人(3年)が押しこみ、先制に成功した。

しかし、20分には矢板中央MF平野巧(3年)に同点ゴールを許す。拮抗した展開の中、60分にMF柑本凛伍(3年)が勝ち越しゴールを挙げ、再び奈良育英がリードを奪った。このまま試合終了かと思われた後半アディショナルタイム。80分+3分に矢板中央FW竹内麻廷有主(2年)に劇的な同点ゴールを許し、試合はPK戦へともつれ込んだ。

PK戦では、主将GK内村篤紀(3年)がビッグセーブを見せるなど活躍。3-2で制し、奈良育英は5大会ぶりの選手権勝利を収め、その1勝を亡き2人の仲間へ捧げた。

12月31日には同会場で大分鶴崎高校(大分県)と2回戦を戦ったが、相手の堅い守備を崩し切れず0-1で敗戦。奈良育英の選手権は2回戦敗退で幕を閉じた。試合後、内村は「2回戦で負けてしまったことに関しては2人に天国から厳しく言われると思います。ただ、1回戦で勝てたことは2人も喜んでいるのかなと思います」と語った。


奈良育英高校 横断幕 写真:Yusuke Sueyoshi

「大琥・愛流と共に闘え!」

初戦・矢板中央戦の試合前、奈良育英の応援団からメンバー入りの選手たちへ、ひとつのサプライズが用意されていた。掲出された横断幕には、「大琥・愛流と共に闘え!」という亡き2選手の想いを乗せた、力強いメッセージが刻まれていた。

その横断幕を目にした内村は、試合前の心境をこう振り返る。「試合前に泣きそうになってしまいました。試合で苦しい時間帯に横断幕を見て力を貰いましたし、そのおかげで頑張れたと大きく感じます。一回戦で勝つことができたのも、森嶋と東の想いを背負って戦うことができたおかげです」。

仲間の想いは、確かにピッチ上で奈良育英イレブンを後押ししていた。さまざまな想いを背負って挑んだ今大会を振り返り、内村は胸の内を明かした。

「全員があの苦しい出来事を乗り越えられたからこそ全国で1勝をつかむことができましたし、自分もキャプテンとして引っ張ることができました。ただ、2回戦で負けたことは悔しいです。下級生がこの経験をゼロにしてしまうと僕らがやってきたことも意味がなくなってしまうので、次の経験に活かしてほしいと思います」と後輩に想いを託した。

Previous
ページ 1 / 2

名前:Yusuke Sueyoshi
趣味:スポーツ観戦(野球、サッカー)、サウナ、ジム
好きなチーム:北海道コンサドーレ札幌、ジェフユナイテッド千葉、FCバルセロナ

私ならではの視点から皆様に情報を発信していきたいと考えておりますので何卒宜しくお願いいたします。

筆者記事一覧