
1993年のJリーグ発足当初、リーグ戦で使用できるユニフォームはミズノ製に統一され、各クラブの独自デザインは天皇杯や当時のヤマザキナビスコ杯でのみ着用が認められていた。リーグ主導でデザイン・販売が行われたため画一的になり、サポーターの間でも賛否が分かれた。
現在ではクラブごとにサプライヤーを自由に選択でき、ナイキ、アディダス、プーマ、アシックスなど大手メーカーが主流を占める。一方で、後発クラブを中心に“自前”でユニフォームを制作し、ブランド戦略や収益構造を強化しようとする動きも広がっている。
ここでは、栃木シティ、カマタマーレ讃岐、鹿児島ユナイテッドの事例をもとに、J3クラブが独自ブランドや協働ブランドを採用する背景やメリット、課題について整理する。

独自性を前面に出す栃木シティのアプローチ
2025シーズンからJ3に参戦した栃木シティは、LUXPERIOR(ラクスペリア)との協働によるユニフォーム戦略で注目を集めている。ホームユニフォームは黒を基調とした大胆なデザインで、クラブの世界観を強調する構成となっている。Jリーグ全体を見渡しても“黒一色”を採用するクラブは多くなく、視覚的なインパクトを生む選択だ。
2025年モデルのテーマは「SURGE(うねり)」。波状のグラフィックでクラブの勢いや上昇志向を表現し、地域性とビジョンをユニフォームに落とし込んでいる。大手メーカーの既存テンプレートに依存しないため、クラブの個性を最大限に表現できるのが強みだ。
讃岐・鹿児島が取り組む協働ブランド「ANGUA」
カマタマーレ讃岐と鹿児島ユナイテッドは、Jリーグと三菱商事ファッションが共同で展開する「ANGUA(アングア)」プロジェクトによってユニフォームを制作している。クラブが単独で自社ブランドを保有しているわけではないが、ANGUAは地域性や理念を反映しやすい柔軟な設計思想を備えており、“準自社ブランド”とも言える独自性を確保できる点が特徴だ。
讃岐は「うどん県の誇り」をテーマに地元性の強いデザインを打ち出し、鹿児島はクラブの象徴である火山・桜島をモチーフとしたグラフィックを継続的に採用するなど、各クラブが地域文化と結びついたユニフォームを展開している。

メリット:収益率の向上とブランド価値の強化
自前・協働ブランドを採用する最大のメリットは、ユニフォーム販売による収益をより直接的にクラブへ還元できる点だ。大手メーカーと契約する場合はロイヤリティやマージンが発生するが、独自生産方式ではその割合を抑えることができ、クラブの手元に残る利益が増える。
また、小ロット生産や限定版の展開がしやすく、ファンのニーズに応じた柔軟な企画が可能になる。クラブ理念や地域性を反映したデザインはファンとの距離を縮め、ブランド力の向上にもつながる。
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