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アメリカ女子プロクラブ、「ChatGPT」戦術活用で成績躍進

シアトル・レイン 写真:Getty Images

 アメリカ女子1部ナショナル・ウィメンズ・サッカーリーグ(NWSL)のシアトル・レインを率いるローラ・ハービー監督が、チーム編成や戦術立案に対話型生成AI「ChatGPT」を活用していることを明かした。昨シーズンは14チーム中13位と低迷したが、「ChatGPT」の助言を取り入れて複数の試合で5バックを採用した今シーズンは、第26節(最終節)を終えて5位に浮上し、見事プレーオフ進出を果たしている。

 英紙『ガーディアン』(10月30日付)によると、ハービー監督は最近出演したポッドキャスト番組の中で、今シーズンの躍進の理由について「ChatGPT」の存在を挙げた。オフシーズン中に試しに「ChatGPT」を使い、「シアトル・レインのアイデンティティについて教えて」と質問してみたのが始まりだったという。

 次々と回答が返ってくる中で、当初は半信半疑だったようだ。しかし「NWSLのチームに勝つには、どんなフォーメーションを組めばいい?」と尋ねると、リーグ全チームの情報を踏まえた上で、採用すべきフォーメーションが具体的に提案された。その中で2チームに対しては「5バックを使うべき」と示され、今シーズン実際にその戦術を採用したという。ハービー監督は「冗談じゃなく、それが理由です」と語っている。

 これについて、データアナリストのキム・マッコーリー氏は「ハービー監督の判断は極めて合理的だった」と指摘している。シアトル・レインが今シーズン初めて5バックを採用したのは、4月のオーランド・プライド戦。試合には0-1で敗れたものの、チャンスメイク数とゴール期待値(xG)は大幅に向上した。その後、チームは継続的に5バックを採用し、守備の安定と失点数の減少につなげている。

 ただしハービー監督は、「ChatGPT」の提案をそのまま採用したわけではないと強調する。実際に導入する前には、コーチ陣と入念なミーティングや分析を重ねた上で最終判断を下したという。

 なお、ハービー監督は現役時代、ケガの影響で若くして引退を余儀なくされた。その後、バーミンガム・シティ・レディースやアーセナル・レディースを率いたのち、2012年にシアトル・レインの監督に就任。元なでしこジャパンMF川澄奈穂美(現アルビレックス新潟レディース)を獲得した2014年には、チームをNWSLシールド(シーズン最多勝点)に導き、同年のイングランドサッカー協会(FA)最優秀監督にも選出されている。