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集音マイクに拾われてしまったサッカー試合中の“迷言”4選

武田英二郎(左)ウェイン・ルーニー(右)写真:Getty Images

サッカーの試合中、選手たちの熱い声がピッチ脇の集音マイクに拾われ、テレビ中継を通して視聴者の耳に届くことがある。それはチームメイトを鼓舞する声や戦術的な指示であることもあれば、時にはレフェリーへの抗議の声であることも多い。

抗議の声が度を越すと警告の対象となるが、2025年8月からは判定に関する説明を求められるのが主将のみとする「キャプテンオンリー」ルールも採用され始めている。審判への不必要な詰め寄りを防ぐ目的だ。とはいえ、相手が味方であれ審判であれ、興奮状態にある選手が思わず声を荒らげてしまうのを完全に止めることは難しい。

ここでは、そうした“選手の叫び”がピッチサイドのマイクに拾われ、思わぬ話題を呼んだ事例をいくつか紹介する。その一方で、マイクを通じて選手たちの人間味や個性に触れられることこそ、現代のサッカー観戦がもたらす新たな魅力のひとつでもある。


森脇良太 写真:Getty Images

森脇良太「(ファウルを)誘ってんじゃん!分かる!?」

2014年9月7日、ヤマザキナビスコカップ(現ルヴァンカップ)準々決勝第2戦。当時浦和レッズに所属していた元日本代表DF森脇良太(2024年引退)は、古巣サンフレッチェ広島との一戦(会場:埼玉スタジアム2002/結果:2-2)で、後半アディショナルタイムに熱くなっていた。

広島MF髙萩洋次郎との競り合いでファウルを取られた森脇は、副審に詰め寄りながら「誘ってんじゃん!分かる!?分かる!?」と抗議。ちょうどその場が集音マイクの置かれたコーナーフラッグ付近だったため、この声はテレビ中継にそのまま乗ってしまう。以来、「誘ってんじゃん」は森脇の“代名詞”として知られるようになった。

その後に森脇はサッカー誌のインタビューで、髙萩が昭和61年生まれの同い年で、しかも広島ユース時代に同じ釜の飯を食った仲である過去を明かし、「お互いに分かり合っているからこそのプレーだった」と語っている。育成年代から切磋琢磨した信頼関係があったからこそ、本音がこぼれた瞬間だったのだ。


武田英二郎 写真:Getty Images

佐藤謙介「出ろよ!」武田英二郎「いや無理!」

2020年8月19日、J1リーグ第11節。横浜FCはニッパツ三ツ沢競技場で鹿島アントラーズと対戦し、結果は1-0で横浜FCが勝利を収めた。

鹿島からの金星が目前に迫る後半42分、横浜FCのMF佐藤謙介(現レノファ山口スカウト兼コーチ)がDF武田英二郎(現横浜F・マリノス強化部)に対し、「(前に)出ろよ!」と声をかける場面があった。武田はこれに「いや無理!」と応えたとされる。このやり取りは、中継映像や観客の記録により再現されたもので、スタンドにいた観客からも笑いが起こった。

当時はコロナ禍の影響で、第3節までは無観客試合(リモートマッチ)、第4節以降も上限5,000人以下または収容人数の50%以下の少ない方での開催と制限されていた。この日の観客数は2,773人で、声出し応援も禁止される中、選手同士のやり取りやベンチからの指示が観客席に届く、珍しい環境での試合となった。

こうした状況下でスタジアムに足を運んだファンにとっては、今後のJリーグではなかなか見られない貴重な体験となっただろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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