
長期契約が足かせに
中村がスタッド・ランスを退団できなかった根本的な理由は、契約が2028年6月まで残っているということだ。クラブからすれば、契約途中で退団を希望するのは選手のワガママとなる。しかし、競技環境は刻々と変化し、4年に1度の祭典W杯も控えている。選手だって生身の人間で気変わりすることもある。モチベーションの下がった選手を置いておくのはクラブのためにもならない。
逆に「売却益を得たい」「チームの構想外」といった事情で、クラブが契約途中の選手の放出を押し通そうとすることもある。契約期間が選手の商品価値を生んでおり、サッカー界においてこの押し問答はお互い様だ。
中村の契約に違約金(移籍金)が設定されているとすれば、その金額を満たすオファーがなく、ランスが減額に応じなかったことが考えられる。設定金額がないのであれば、ランスが全てのオファーを門前払いしたということだろう。

より移籍しやすくする方法は
より移籍しやすくする方法として、短期契約を結ぶ方法もある。しかし、クラブは長期契約を締結して有能な選手を囲って戦力を確保し、移籍でビジネスをするのが慣例になっている。中村もその例に漏れず5年という長期契約での加入だった。
万が一にも大怪我をしたら契約延長もなく、新たなクラブとの契約の道も絶たれて路頭に迷うことになる。しばしの安定を望むか、失業リスクを覚悟で適時移籍できる自由を望むか。どちらを好むかは選手によっても異なるが、クラブの意向もあり契約期間は交渉によって落とし所が決められる。
また、降格時に契約解除できる条項を盛り込むという方法もある。これは、クラブ側が希望する場合もある。下部リーグでの予算編成を滞りなく行うためだ。選手側から希望することもできるが「クラブが窮地の時にさじを投げる無責任な選手だ」という印象を持たれ、交渉が決裂するリスクもはらむ。
中村サイドは、降格しないと信じて疑わなかったか、交渉決裂のリスクを避けるためにこの条項を入れなかったか、もしくは希望したがクラブ側から却下された可能性が考えられる。

今求められるのは段違いの活躍
契約時、中村にとってスタッド・ランスは初の欧州5大リーグでのプレーであり、交渉を是が非でも成立させたいという気持ちが強かったのかもしれない。今回の混乱を未然に防げる可能性はあったが、時すでに遅し。欧州主要リーグの今夏の移籍ウインドーは、9月1日に閉じてしまった。
中村は冬に移籍し、上位リーグでプレーして勢いをつけてW杯本番に臨みたいところだろうが、契約がある以上はクラブが再び拒否する可能性もある。その時は「2部であっても代表選出に値する」と、日本代表の森保一監督を納得させるだけの活躍が求められることになるだろう。
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