
欧州5大リーグ(プレミアリーグ、ラ・リーガ、セリエA、ブンデスリーガ、リーグ・アン)において、2025/26シーズンは“お久しぶり”な名前が加わった。長い低迷期を経験し、ついに最高峰の舞台に戻ってきたクラブだ。彼らは現在、生き残りをかけた熾烈な戦いに直面している。
ここでは、欧州5大リーグにて久しぶりに昇格を果たした4つのクラブに焦点を当て、彼らがどのようにしてこの舞台に辿り着き、今シーズン残留を果たせる可能性があるのかを掘り下げていきたい。

ピサSC(セリエA/34シーズンぶり)
幾度もの破産と改名を乗り越えセリエAへ再挑戦
イタリア有数の古代建造物にして、物理学者ガリレオ・ガリレイが物体落下の実験を行った場所としても有名な「ピサの斜塔」の地を本拠地とするピサSC。その歴史の中で幾度となく困難を乗り越えてきた。特に2000年代には2度の破産を経験し、その度に新たなオーナーを迎え、クラブ名を変更して再出発を余儀なくされていた歴史がある。それでも彼らは不屈の精神で這い上がり、2024/25シーズンのセリエBで2位に食い込み、1990/91シーズン以来34年ぶりとなるセリエAへの昇格を決めた。
前回のセリエA所属時(1990-91)には、ブラジル代表として1994年のFIFAワールドカップ(W杯)アメリカ大会を制したMFドゥンガ(1987-1988)や、アルゼンチン代表MFディエゴ・シメオネ(1990-1992)が所属し、欧州デビューを果たしている。近年では、現イタリア代表のジェンナーロ・ガットゥーゾ監督(2015-2017)が指揮を執り、チームをセリエB昇格に導いた。多くの名選手や名将がピサでキャリアを築いてきたことは注目に値する。
さらに、2024/25シーズンには元イタリア代表FWのフィリッポ・インザーギ監督が就任し、昇格に導いた。しかし、契約を延長することはなく、ピサSCは新監督に元イタリア代表FWのアルベルト・ジラルディーノ監督を迎え、セリエAの舞台で残留を目指している。チームは第3節終了時点で1分け2敗と、まだ勝利に届いていないが、3試合とも1失点に抑えており、攻撃陣の覚醒が待たれる。
ちなみに、ホームスタジアムのスタディオ・ロメオ・アンコネターニは、ピサの斜塔から約500メートルの場所にある。仮に同地を訪れる機会があれば、観光もサッカーも楽しみたいところだ。

パリFC(リーグ・アン/46シーズンぶり)
46年ぶりの1部昇格、PSGの影からの脱却
フランスの首都パリを本拠地とするパリFCは、2024/25シーズンにリーグ・ドゥを2位で終え、46年ぶりにリーグ・アンへの復帰を果たした。
パリFCは、首都にビッグクラブを作るべく1969年に創設され、翌1970年にパリ市郊外のスタッド・サンジェルマンと合併してパリ・サンジェルマン(PSG)となったものの、方向性の違いによって1972年には再びパリFCとして独立再創設。その後の両クラブは明暗が分かれた。PSGが世界的なメガクラブへと成長し2024/25シーズンには欧州CL(UEFAチャンピオンズリーグ)を初制覇した一方、パリFCは長らく2部リーグ以下での戦いを強いられてきた。
飛躍の背景には、2024年10月にクリスチャン・ディオールやルイ・ヴィトン、ブルガリ、ティファニーなどを傘下に置くLVMH会長兼CEOのベルナール・アルノー氏とその一族がクラブを買収したことが大きい。さらにレッドブルグループが少数株主(10.6%)となりクラブ運営のノウハウも得たことで、大規模な投資がなされ、選手補強が可能になった(出典:AFP NEWS)。買収した理由はパリのサッカー市場拡大を狙ったもので、PSGとのライバル関係を生かしたマーケティング戦略と言われている。
現在、リーグ・アンで圧倒的な強さを誇るPSGとは対照的に、パリFCは開幕2連敗を喫し、第2節のオリンピック・マルセイユとのアウェイ戦では5失点を喫した。それでも立て直し、第3節、第4節と連勝し、星を五分に戻した。もし今シーズン、パリFCが善戦しリーグ・アン残留を果たすことができれば、パリでの勢力図にも変化が起きる可能性を秘めている。
パリFCのホームスタジアム、スタッド・ジャン=ブーアンは、PSGのホーム、パルク・デ・プランスと通り1本を挟んだ場所に位置している。パリFCが古豪としてPSGのライバルとなれるか、花の都を舞台とするダービーマッチにも注目だ。
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