Jリーグ 福島ユナイテッドFC

福島ユナイテッドの超攻撃的サッカー哲学。J3最多失点でも突き進む理由

SC相模原 写真:Getty Images

コメントにも表れる選手の攻撃意識

さらに福島の攻撃サッカーは、選手たちの意識にも支えられている。選手たちも失点の多さを気にせず、攻撃で結果を出すことにフォーカスしているようだ。

相模原戦の試合前コメントで、MF城定幹大は「得点を取るという、一番サッカーの面白いところを見てもらえるすごくいいチャンスだと思う」と語り、攻撃への意欲を示した。

また、MF上畑佑平士も、7月11日の第19節ツエーゲン金沢戦(金沢ゴーゴーカレースタジアム/1-2)で敗戦後にもかかわらず「僕たちはまだまだ死んでない。やれると思う」と前向きな姿勢を見せた。

試合が終わるまで何が起きるか分からない

相模原戦では、福島は前半19分にFW森晃太がゴールを決めたが、その後は防戦一方。9本のシュートを浴びたが、GK吉丸絢梓の多くのファインセーブも飛び出し、さらにDF陣の体を張ったシュートブロックで得点を許さなかった。途中出場のFW清水一雅やFW矢島輝一もカウンターを狙い、終盤まで追加点の匂いは感じさせた。福島のチームカラーから、先制したとしても“このまま終わるハズがない”と思わせながらも、いい意味で“らしくない”試合運びで連敗を止め、この試合では失点を0に抑えた。

過去の試合では守備の連携ミスから失点するシーンも多く、5月17日の第13節鹿児島ユナイテッド戦(白波スタジアム)では5失点、6月22日の第17節FC大阪戦(花園ラグビー場)では7失点を喫した。

一方、3月26日ルヴァン杯ファーストラウンド1回戦のJ2北海道コンサドーレ札幌戦(とうほう・みんなのスタジアム)では、3-3からの延長戦で3ゴールを叩き込み、6-3で格上を撃破。4月16日同2回戦のJ1柏レイソル戦(とうほう・みんなのスタジアム)でも2点先制されながらも一度は追い付き、2-3の接戦を演じた。

さらに、6月11日の天皇杯2回戦では、業務提携を結んでいる川崎と対戦(Uvanceとどろきスタジアム/3-4)。先制したものの逆転され4失点したが、終了間際に立て続けに2得点を奪い、冷や汗をかかせた。試合が終わるまで何が起きるか分からない、ビックリ箱のようなチームカラーを持つのが福島の特色だ。


福島ユナイテッド 写真:Getty Images

なぜ失点が多くても攻撃にこだわるのか

寺田監督は、リーグ戦3連敗となった7月5日のツエーゲン金沢戦(1-2)後、「福島サポーターと苦しい状況を一緒に共有しながら、なんとか乗り越えて、最終的に喜んでもらえるようにしなければいけない」と語った。攻撃サッカーは、サポーターに希望を与え、スタジアムを盛り上げるための手段でもある。

また、J3はJ2昇格を目指す競争が激しく、勝ち点だけでなく得失点差や総得点も重要な指標となる。守備を固めるよりも、得点を重ねることで上位進出を狙う戦略を取っていると言えよう。ただし今季は失点癖がネックとなり、終盤のプレーオフ進出争いでは不利となる可能性もある。

福島の得点数は、第20節終了時点でリーグ首位の栃木シティ、2位のFC大阪、5位の鹿児島ユナイテッドと並ぶトップタイの32得点。失点数とのバランスが悪い印象を残すが、得点を取ることで試合をコントロールし、上位進出を狙うと考えているようだ。

相模原戦はロースコアの一戦だったが、福島の試合は総じて高スコアの試合が多い。


Jリーグ 写真:Getty Images

攻撃サッカーを維持した上でJ2を目指すには

攻撃的なスタイルは観客を魅了するが、失点数の多さが昇格争いの足かせとなることは明らかだ。例えば、昨シーズンのJ2昇格プレーオフ進出チームの平均失点数が約40点だったのに対し、福島の43失点は既にこれを上回っている。

今後、福島がJ2昇格を果たすためには、攻撃力を維持しつつ守備の安定性を高める必要があるだろう。選手層の厚さも課題で、特に守備陣のケガや疲労が失点増加の一因となっている。

寺田監督は守備のテコ入れにも取り組んでおり、相模原戦でのクリーンシートはその兆候と言えるだろう。相模原戦ではGKを含めた守備陣の頑張りが目立ったが、シーズンを通しての継続性が求められている。また、若手のMF狩野海晟やMF中村翼といった戦力が台頭すれば、攻撃のバリエーションが増し、守備の負担軽減にもつながるだろう。選手の成長がチームの今後の鍵を握っている。

相模原戦での勝利は、新たなスタイルが結果に結び付く可能性を示した。守備の改善が今後の課題だが、福島の超攻撃的サッカーは、J2昇格を目指す過程で、地域の誇りとサポーターの心を掴み続けるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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