
2025年も例年通り、各地で“聖地”甲子園球場を目指し、高校球児が熱戦を繰り広げている。8月5日から18日間に渡って開催される夏の全国高校野球選手権大会(第107回大会)に向けて、都道府県ごとの予選(地方大会)が佳境を迎えている。
ここ数年、高校野球では改革が進められている。2018年春のセンバツ(第90回選抜高校野球)からは延長13回以降に無死一・二塁で始まるタイブレーク(※1)が導入され、2020年からは投手の球数制限(※2)が設けられた。さらに、昨2024年春のセンバツからは、高速化する打球から選手の安全を守るため、反発力を抑えた新基準の金属バット(いわゆる低反発バット)が導入された。
しかし一方で、少子化の影響を受け、高野連(日本高等学校野球連盟)加盟校数も野球部員数も減少傾向にある(出典:日本高野連公式サイト)。このため高野連は1997年から、野球部員数が不足する学校が複数校でチームを組んで参加できる「連合チーム制度」を導入した。
一般には「単独廃校ルール」としても知られるこの制度によって、現在では、2校の合同チームにとどまらず、3~4校以上の連合チームも珍しくなくない。少子化の影響で部員不足が深刻化する中、この制度が高校野球の裾野を支える一助となっている。
ここでは、連合チーム制度が高校サッカー界に採用される可能性を、スポーツ環境の違いを踏まえて考察し、高校スポーツの将来について展望を述べる。
(※1)延長戦でも勝敗が決まらない場合に、より早く決着をつけるために導入される特別ルール。2023年からは延長10回から。(※2)1週間500球以内。

部員数半減の予測と連合チーム制度の課題
高野連が採用を決めた連合チーム制度の背景には、少子化と、それに伴う部員不足がある。2024年の夏の甲子園大会は、参加チーム数が3441チーム(3715校)で、20大会連続で減少。連合チームは過去最多の133チーム(403校)に達した。
少子化は野球のみならず、サッカーやラグビーなどの高校スポーツに大きな影を落としている。スポーツ庁の2019年3月の調査によれば、2009年から2048年までに運動部活動の生徒数が約30%減少し、チームスポーツでは半減する可能性があると予測されている。特に野球は9人、サッカーは11人、ラグビーは15人以上が必要で、部員不足は即、試合が成立するかどうかの瀬戸際となる。
高野連は連合チーム制度を導入したが、その運用については疑問の声があるのも事実だ。
連合チーム制度では、たとえば部員が5人しかいない学校が、他校から5人の選手を借りて10人のチームを編成し、大会に出場できるようになる。借り受ける選手は、原則として所属校でレギュラー出場の機会が乏しい選手が多く、戦力強化を目的とした運用は本来想定されていない。この制度は、少人数校にも試合出場の機会を保障するという教育的意義に基づいて導入された。
しかし、2024年夏の全国高校野球選手権岩手大会では、部員がわずか5人だった県立金ケ崎高校が、花巻東高校と連合チームを組み、6年ぶりに初戦を突破した。花巻東といえば、大谷翔平(ロサンゼルス・ドジャース)や菊池雄星(ロサンゼルス・エンゼルス)を輩出した名門校である。
連合チームには、花巻東の2年生3人と1年生2人の計5人が参加。しかも彼らは、同年春のセンバツでベスト8入りを果たしたチームの主力候補であり、投手・捕手・二塁手・遊撃手といった“センターライン”を担い、打順も1番から5番を占めていた。その結果「さすがに反則ではないか」とネット上で物議を醸した(2回戦では盛岡第三高校に敗退)。
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