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福山シティの新スタジアム建設構想はアドバルーンか現実的な計画か

Jリーグ 写真:Getty Images

2年後完成スケジュールの現実性は?

スタジアム建設には、用地選定、設計、許認可取得、建設工事といったプロセスが必要で、通常3~5年を要する。例えば、モンテディオ山形の2万人規模を予定している新スタジアムは、2025年着工、2027年完成を目標に計画が進行中だが、用地選定や資金調達に時間を要している。

福山シティの場合、建設地が未定であることが最大のネックだ。地元住民からと思われるSNS投稿では、福山競馬場(2013年閉場)の跡地にあるエフピコアリーナ(福山市総合体育館)横が候補として推測されているが、公式な発表ではない。用地選定には行政との交渉や地権者の同意が必要であり、これが遅れればスケジュール全体に影響を及ぼす。

さらに、Jリーグ基準を満たすスタジアムには、照明、観客席、駐車場、アクセスインフラなどの要件があり、設計と建設の迅速な進行が求められる。2027年秋の完成を目指すというスケジュールは、具体的な工程表や進捗が公表されていないため、の現実性が低いと評価せざるを得ないだろう。


経営基盤、Jリーグ参入の課題は?

福山シティは2015年、福山青年会議所などにより設立された任意団体「福山にプロサッカークラブをつくろう会」を法人化したクラブを母体に、2017年に創設された。以来、広島県リーグ5部から中国リーグまで急速に昇格し、2027/28シーズンのJ3参入を目指している。

2025シーズンには、27歳の小谷野拓夢監督を復帰させ、8選手を補強するなど、JFL昇格に向けた体制強化を進めている。しかし、2023年度はトップチーム運営で1,400万円の赤字を計上しており、Jリーグ参入に必要な財務基盤の強化が課題だ。

Jリーグ参入には、スタジアム基準の適合に加え、最低でも年5億円程度の運営資金が必要とされる。岡本代表は「J3中位レベルの売り上げ規模を目指す」と語っているが、現在の収益3億5,700万円から大幅な増収が必要だ。

民設民営でのスタジアム建設が実現すれば、ホームゲームの興行収入や地域イベントの開催による収益向上が期待されるが、建設費の返済負担やスタジアムの維持費や固定費も考慮する必要があるだろう。

また、スタジアムの収益性は観客動員に大きく依存する。福山シティの現在のホームゲームの平均観客数は公表されていないが、今2025シーズンの最高記録は6月22日に行われたベルガロッソいわみ戦(竹ヶ端運動公園陸上競技場)の3,066人。地域リーグとすれば素晴らしい数字だが、JFL、さらにJ3への昇格を視野に入れるならば、地域住民やサポーターのより強い支持が必要だ。


Jリーグ参入という野心的な目標と、地域活性化を目指すビジョンに支えられている福山シティの新スタジアム構想。民間資金による練習場整備の実績は、計画の実現可能性をある程度裏付けている。

しかし現時点では、建設地の未定、2年という短いスケジュール、40億円の資金調達の不透明さは大きな課題だ。国内の他クラブの事例を見ても、スタジアム建設には資金や用地確保の面で苦戦するケースが多く、計画の具体化が遅れれば遅れるほど「結局は単なるアドバルーンだった」として批判を受ける可能性が高い。

福山シティがこの構想を実現するには、具体的な資金計画や建設地の早期確定、行政や地域住民との協力が不可欠だ。当然ながら、建設へ向けての進捗状況を逐一、市民に公表することも忘れてはならないだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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