高校サッカー

“絶対王者”青森山田不在のインターハイ。高校サッカー界の地殻変動とは

高岡伶颯 写真:Getty Images

戦術の進化、指導者レベル向上、育成環境の変化

近年の高校サッカーにおける戦術の進化は著しい。かつてはロングボールやフィジカル勝負が主流だったが、Jリーグや欧州サッカーの影響を受け、ポゼッション志向やハイプレス戦術が浸透している。

昌平の成功は、ショートパスを繋ぎながら相手の守備を崩すスタイルにあった。また、桐光学園高校(神奈川県代表)や尚志高校(福島県代表)も、ビルドアップやプレッシングを重視した戦術で結果を残している。

戦術進化の背景には、指導者のレベル向上があると言える。JFA公認ライセンスを持つ指導者が増え、Jクラブの監督を務めることもできるJFA Proライセンスを所持している監督も珍しくない。科学的データや映像分析を活用した指導も広まっている。さらに、Jリーグのユースチームとの交流により、高校年代でもプロレベルの戦術理解が求められるようになっている。

育成環境の変化も、高校サッカー界の地殻変動を後押ししていると言えるだろう。Jリーグのユースチームや高校年代のクラブチーム(いわゆる“街クラブ”)との連携も強化され、高校サッカー部に所属しながらプロのスカウトを受ける選手が増えた。

例えば、日章学園高校のFW高岡伶颯(2024年インターハイでは宮崎県予選決勝戦で2得点したものの全国大会は負傷欠場)はJリーグを飛び越え、プレミアリーグのサウサンプトン入団を果たした(2024年6月19日契約発表、2025年3月本契約)。こうした例は、インターハイが単なる高校生の大会を超え、国際的なスカウティングの場となっていることを示している。

また、施設面でも進化が見られる。会場のJヴィレッジはインターハイの固定開催地として、最新のピッチやトレーニング環境を提供し、選手のパフォーマンス向上に寄与している。

かつて高校サッカー界は、関東や九州、静岡といった特定地域の強豪校が主導権を握っていた。しかし、近年は全国各地での競争力向上が顕著だ。2025年の予選結果を見ると、東北・北海道勢の活躍が目立つ。 これらの地域では、地域サッカー協会や地元企業がサポートを強化し、指導者養成や施設整備に力を入れている。


サッカーボール 写真:Getty Images

2025年インターハイ注目の選手は?

単なる部活動を超え、地域の誇りを象徴する存在となっている高校サッカー。インターハイの試合は地元メディアでも広く取り上げられ、特にコロナ禍を経て、スポーツを通じた団結力の重要性が再認識され、その価値も高まっている。

未来のJリーガーや日本代表選手を発掘する場としても、2025年も新たなスターの誕生が期待される。全国中学校大会優勝の経験があるレフティーのMF川合亜門(浜松開誠館高校)を筆頭に、MF河村頼輝(京都橘高校)、DF川上壱也(聖和学園高校)といった選手に、早くもプロのスカウトが熱視線を送っているようだ。


一方、課題としては、2024年から福島県での固定開催が始まったが、今年の夏は福島県沿岸部でも酷暑が続いている。過密日程や酷暑下での試合は、試合時間が70分(35分ハーフ)とはいえ、選手のコンディション管理に不安を残す。また、プロ志向の選手が増える中、高校サッカーが学生スポーツとしての魅力をどう維持するかも議論の余地があるだろう。

今年のインターハイは、高校サッカー界随一の強豪校、青森山田が不在というトピックにも表れているように、地殻変動の始まりとなる可能性を秘めた大会となる予感がある。上述の進化は、日本サッカーの未来を形作る重要な要素だ。新たなスター選手が、Jヴィレッジで誕生する期待が高まっている。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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