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久保建英ステップアップ移籍の壁「保有権」「キャピタルゲイン」とは

久保建英 写真:Getty Images

久保やソシエダの姿勢とマドリード復帰の可能性

久保自身はこれまで移籍に対して慎重な姿勢を見せていた。ソシエダとの契約を延長した際も、彼はクラブのプロジェクトにコミットする姿勢を示していた。また、スペインメディアによると、久保はサン・セバスティアンでの生活に満足しているという。よっぽど魅力的なオファーでなければ移籍の実現は難しいだろう。

ソシエダでのマイナス要素を挙げるとすれば、来2025/26シーズンの欧州カップ戦を戦えないという1点のみだ。さらに来シーズン終了後には2026FIFAワールドカップ北中米大会が控えている。仮にビッグクラブに移籍できたとしても、“ベンチウォーマー”の扱いを受ければ、日本代表での序列を下げかねないリスクもある。

ソシエダは、久保をクラブの戦略的プロジェクトに不可欠な選手と位置づけている。彼はピッチ上での貢献だけでなくマーケティング面でも重要な役割を果たしており、クラブの日本語版公式Xアカウントの存在からもその価値が伺える。ソシエダが欧州カップ戦出場権を逃したことで移籍の可能性が高まったとされたと言われているが、セルヒオ・フランシスコ新監督の下、来シーズンに向けたチームビルディング次第では、久保を手放さない姿勢を貫くだろう。

一方、久保がマドリードに復帰する可能性も議論されている。ここで壁となるのがEU圏外選手枠の制限だったが、ブラジル代表FWヴィニシウス・ジュニオールやブラジル代表FWロドリゴ、イングランド代表MFジュード・ベリンガムらEU圏外選手がスペイン国籍(ベリンガムはアイルランド国籍)を取得したことで、久保を再獲得する壁は現状なくなっている。

しかもロドリゴには移籍話が浮上しており、シャビ・アロンソ新監督が求めるならば、新生マドリードに久保が加わる可能性もわずかながらある。マドリードにとっては、わずか2,700万ユーロで久保を買い戻せるメリットがここで生きてくる。


久保建英 写真:Getty Images

移籍のタイミングとその行き先は…

久保の市場価値は、2025年時点で約4,000万ユーロ(約65億円)から9,800万ユーロ(約161億円)と評価されている(2024/25シーズンはソシエダの主力としてチーム内6位の報酬)。24歳という若さや、W杯を含む今後の活躍で、さらに価値が上昇する可能性もあるだろう。しかし、契約の複雑さと高額な移籍金がステップアップ移籍を難しくしているのも事実だ。

久保の移籍をめぐる保有権の壁は、移籍金の設定、マドリードのキャピタルゲイン条項、久保自身の意向、ソシエダの戦略、そして欧州カップ戦への出場権など、複数の要因が絡み合っている。現在、ソシエダが100%の保有権を持ちつつ、マドリードが将来的な移籍金の50%を受け取る権利を保持する構造は、久保の市場価値を最大化させる必要があり、移籍交渉を複雑化させている。

久保がビッグクラブへステップアップするためには、これらの障壁を乗り越えるための戦略的な動きが必要だ。代理人の変更がその一歩とされているが、彼の才能と市場価値を考えれば、移籍のタイミングとその行き先は、保有権やキャピタルゲインの構造と、キャリアにとって何がベストかの自身の選択にかかっていると言えるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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