Jリーグ

31歳で初の月間MVP!田中パウロ淳一の波乱万丈過ぎるサッカー人生

栃木シティ サポーター 写真:Getty Images

「4年間怪我なしの鉄人」栃木シティで開花

再びトライアウトに挑んだ末、2023年当時関東リーグ1部だった栃木シティからオファーを受け入団した田中。SNSを通じて「4年間怪我なしの鉄人」「練習試合得点王」という“ストロングポイント”をアピールしたことも効果を発揮した。

落ちるところまで落ちた感のある移籍だったが、ここから彼の大逆転人生が始まる。栃木シティは2023シーズンで関東リーグ2位となり、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ(地域CL)で優勝。2017シーズン以来のJFL復帰を果たす。田中はこの大会で4得点を挙げ得点王を獲得した。

翌2024シーズン、栃木シティはJFL復帰初年度にして初優勝を飾るとともに、J3クラブライセンスが交付され、昇格条件の観客平均2,000人以上もクリアしたことでJ3昇格が決定。田中も公式戦27試合6得点を記録し、チームに貢献した。

そして再びJの舞台に帰ってきた田中は、J3初参戦の2025シーズン、栃木シティの快進撃を支えている。前述のJ3月間MVP受賞のみならず、独特過ぎるゴールパフォーマンスでも話題だ。チームを盛り立てているだけではなく、今季栃木SCがJ3に降格したことで実現した「栃木ダービー」では強烈なライバル意識を示したことで盛り上げにひと役買い、アウェイ戦(カンセキスタジアムとちぎ/1-1)ながら12,807人もの観衆を集めた。


栃木シティ 写真:Getty Images

SNSでの成功、フォロワー約40万人

田中はJリーガーとしてだけでなく、TikTokやYouTubeでは約40万人のフォロワーを持ち、「パウちゃん」というキャラクターに扮し、プロ選手のプレーを再現する「○○みたいな彼女」シリーズが大ヒット。サッカーを知らない層にも栃木シティやJリーグの魅力を伝え続けている。チームメイトのMF土佐陸翼が撮影をサポートし、二人三脚で面白コンテンツを作り上げているという。

フランス留学時の高い評価、JFL優勝、J3月間MVP、SNSでの成功は、彼の才能と努力の結晶であり、特に栃木シティでの活躍はキャリアの再起を象徴している。

その原動力となったのは、川崎F時代の屈辱、J2での不振、そして地域リーグへの“都落ち”などの挫折を嫌というほど味わっていることだろう。だからこそ、栃木シティの大栗崇司社長に対しては感謝の言葉を口にしている。

ちなみに、栃木シティのホームスタジアム「CITY FOOTBALL STATION」は、大栗氏が社長を務める日本理化工業所によって建設されたサッカー専用スタジアムで、収容人数は5,085人と規模は小さいものの、J3クラブとしては珍しく民設民営によって運営されているスタジアムだ。このあたりにも、クラブとしての伸びしろを感じさせる。

MVPを受賞した際の公式コメントで「サッカー諦めなくて良かった」と述べ、苦しい時期を乗り越えた経験が現在の活躍につながっていると語っている田中。さらにSNSでは2025シーズンの目標に「J3優勝」と「栃木SCには絶対負けない」ことを掲げ、栃木シティを「栃木県で一番勢いのあるチーム」にすると宣言。チームはその言葉通りの好調ぶりを見せている。

田中のサッカー人生は、早熟な才能が認められた10代、海外移籍の失敗、Jリーグでの苦闘と低迷、そして栃木シティでの再起という、まるで映画のような劇的な展開を辿っているといえよう。ピッチ上でのキレのあるドリブルとゴールパフォーマンス、SNSでのユーモア溢れる発信を通じて、彼はサッカーと地域を盛り上げる存在となっている。数々の挫折を乗り越えた田中のサッカー人生は、多くのファンに感動と勇気を与えると同時に、Jリーガーの生き方の1つを提示しているようにも思えるのだ。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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