日本代表・海外組 プレミアリーグ

プレミアで冨安健洋のポリバレントなプレースタイルが持つ意味とは

冨安健洋 写真:Getty Images

冨安にとってベストなイングランドでの3バック

専門的なCBとしてプレミアリーグでプレーするなら、身長190cm前後で強靭なフィジカルが欲しいところだ。身長188cm、体重84kgの冨安はそのタイプではないが、ポリバレント性の高さが奏功し成功している。イングランドスタイルの長身フルバックとして、うまく機能している。

また、3バックシステムのCBが冨安にとって理想的だ。ウイングバックが高い位置をとり、そのカバーリングをするCBがサイドに引き出される頻度が増えるため、CBにも高い機動力が求められる。

4バックのCBであれば、ピッチ両側のスペースはFBに任せられるため、CBには高さとパワーがより求められる。イングランドにおける3バックは、冨安のためのシステムと言ってもいいだろう。


吉田麻也 写真:Getty Images

日本人DFのプレミア挑戦で新境地

ちなみに冨安ほどユーティリティ性があるわけではない元日本代表DF吉田麻也(ロサンゼルス・ギャラクシー)も、プレミア(サウサンプトン2012-2020)ではFBでプレーすることがあった。

日本サッカー黎明期の頃は、日本人選手がプレミアでDFとして活躍するイメージが沸かなかった。それを打破したのが、ロンドン五輪で日本代表のキャプテンとして存在感を発揮した吉田だった。サウサンプトンで長年プレーした吉田は、日本人CBとしてプレミアにおける第一人者として成功を収めた。

吉田と入れ違うようにして2021年にプレミア入りした冨安が所属するアーセナルは、毎年のように優勝候補に挙げられる名門。つまり、DFとしてさらなる新境地を切り開いたのである。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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