プレミアリーグ マンチェスター・シティ

CG級の異次元なハーランド。世界の高名な大型ストライカーと比較

アレクサンダー・セルロート(左)アーリング・ハーランド(中)ズラタン・イブラヒモビッチ(右)写真:Getty Images

ノルウェー代表の歴代最多得点記録保持者であるマンチェスター・シティのFWアーリング・ハーランドは、身長194cm、体重88kgと、センターフォワードとして申し分ない体格だ。その得点力の高さは数々のデータで証明されているが、一体何がどう凄くて得点できるのだろうか。

ここではハーランドの体格や特徴を世界の名高い大型ストライカーと比較してみよう。

舞台裏:PSG がブレストに勝利し、UCL ノックアウト ラウンドに進出
Keep WatchingNext video in 8 seconds
 

関連記事:無類の得点量産マシン。アーリング・ハーランドのプレースタイル


アレクサンダー・セルロート 写真:Getty Images

大型ストライカーの特徴

大型ストライカーは上背という大きな特徴がある分、不足しがちな要素を周辺の選手と補完しあいながらプレーをするのが一般的だ。「凸凹コンビ」というのをよく耳にするだろう。大柄なストライカーは動作が遅く足元のボールコントロールが苦手な傾向があり、小柄なアタッカーと組んで相手の守備網を突破してゴールを目指す。

しかし、ハーランドは大柄でありながら、縦への抜け出しを得意とする。多くの能力を一人で持ちあわせている。これが得点を量産する秘密だろう。

ハーランドとの空中戦対策のためには長身のセンターバックを対応させる必要があるが、大柄の選手ほど、アジリティが落ちる傾向があるのはディフェンダーも同じで、スピードで守備ラインを突破される懸念がある。また、クロスボールは浮き玉とは限らない。ヘディングを恐れて長身の選手を当てても、低い弾道のクロスがディフェンスラインとGKの間に入ったら、長身DFは素早く走り込んで足を伸ばすハーランドに到底間に合わない。

相手チームが対策を練る際に非常に悩ましい選手だ。結果として、多くの人数をかけて守る必要があり、味方選手がフリーになる。


ズラタン・イブラヒモビッチ(マンチェスター・ユナイテッド所属時)写真:Getty Images

高名な大型ストライカーたち

では、ハーランドと似た体格の大型ストライカーたちはどうだろうか。

アレクサンダー・セルロート(アトレティコ・マドリード)

ハーランドの父親アルフ・ハーランドもノルウェー代表やマンチェスター・シティ(2000-2003)でプレーしたが、同じくサラブレッドでノルウェー代表の父(ゲラン・セルロート)を持つFWアレクサンダー・セルロート(アトレティコ・マドリード)はハーランドと体格が似ている。

194cm、90kgで、総合力が高いノルウェー代表屈指のストライカーだ。昨2023/24シーズンは、ラ・リーガで34試合に出場し23ゴールをあげ得点王争いをするなど(結果2位)記録を出しているが、裏に抜け出す走力と空中戦の迫力はハーランドが一段上だろう。

ズラタン・イブラヒモビッチ(2023年引退)

マンチェスター・ユナイテッドやスウェーデン代表でプレーしたFWズラタン・イブラヒモビッチ(195cm、96kg)は、ハーランドより身体が一回り大きく完全にポストプレータイプの選手だった。走り回るより足技でボールをためるポストプレーをしながら得点を量産した。

ハーランドは、ポストプレーではあまり長く持つことはせずに、すぐにボールをはたく傾向がある。縦横無尽に動き回りどこからでも攻めてくる。ハーランドの基礎技術は高いものがあるが、イブラのようなボールコントロールは見せない。

イブラの卓越したテクニックは生まれ持った才能によるところが大きい一方で、ハーランドの駆け引きのうまさや動きの質の高さは、ある程度は訓練を積むことで高めることができると言えるだろう。

トーレ・アンドレ・フロー(2012年引退)

チェルシーやノルウェー代表でプレーしたFWトーレ・アンドレ・フロー(193cm、77kg)は、長身で走力があった。一方で、身体の線が細く体重が軽い分、フィジカルコンタクトに強いというわけではなかった。

ロメル・ルカク(ナポリ)

セリエAのナポリに所属するベルギー代表FWロメル・ルカク(190cm、103kg)は、全体的な身体能力の高さでは、ハーランドに近いレベルにある。体重がありパワーは上だが、ハーランドのほうが背丈と走力がある。ボールのないところでの動きや相手との駆け引き、得点センスではハーランドの方がだいぶ上だろう。


アーリング・ハーランド 写真:Getty Images

夢境の化け物

ハーランドの特徴は、上述の大型ストライカーたちの比較では、全体のバランスとしてはセルロートに近い。しかし、ハーランドの走力はより軽量なフローのようであり、パワーはより重量があるイブラヒモビッチのようだ。高いフィジカルが好まれるプレミアリーグにとても向いている。英国リーズで生まれ、寒いノルウェーで育ったため、イングランドは肌にあっているだろう。

ドリブルでの細かいボールタッチやトリックは得意ではないが、あれだけの体格と走力と得点センスを兼ね備えている。一言で説明するなら「化け物」で、まるで夢かCGの産物のように到底この世のものとは思えず、本当に人間だということを疑ってしまうくらいだ。

長身の選手は一般的にプレーにくせがあるため、チームによってフィットする場合とそうでない場合がある。しかし、ハーランドはあらゆる身体能力において高いレベルにあり幅広い戦術的な動きも可能で、様々なチームの戦い方に合わせられる。どのチームでも欲しいと思う、唯一無二の夢のようなプレーヤーだ。

名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

筆者記事一覧