アジア 中国代表

広州FCも解散!中国スーパーリーグが崩壊危機を乗り越えるためには

中国代表 写真:Getty Images

中国代表チームも強化が進まず

不動産バブル崩壊、コロナ禍の追い打ちに加えて中国では、汚職が蔓延ったことでファン離れを招きつつある。CFA会長のチェン・シューユエン氏や、副会長のドゥ・ジャオツァイ氏らが摘発され、他にも10人以上のCFA関係者が汚職の捜査対象だという。

中国代表チームも強化が進まず、2026年のFIFAワールドカップ(W杯)北中米大会からアジア枠が「8.5」と大幅に増えた(カタール大会までは「4.5」)にも関わらず、アジア最終予選では日本代表相手にアウェイで0-7の惨敗を喫し、ホームでも1-3で一蹴された。

W杯のアジア枠増は、FIFA(国際サッカー連盟)にとって重要なスポンサーでもある中国を出場させるためとも囁かれているが、当の中国が経済的にサッカーどころではない状態にあり、2034年W杯招致からも早々に手を引いた。一方で開催国に決まったのが、かつての中国のように国家ぐるみでサッカーに資金を投入し、国内リーグのサウジ・プロフェッショナルリーグにビッグネームを揃えているサウジアラビアというのも皮肉な話だ。

中国代表に話を移すと、チーム強化のため帰化戦略も採られ、アーセナルに所属していたMFニコ・イェナリスや、エバートンに所属していたDFティアス・ブラウニングといった中国系の英国人を帰化させた。さらに全く中国に縁のない5人のブラジル人(FWフェルナンジーニョ、FWアロイージオ、FWエウケソン、MFリカルド・グラール、FWアラン・カルバーリョ)も帰化させたものの、コロナのパンデミック中にこの5人は全員中国を離れ、戻ってきたのは2人だけ。リカルド・グラールは広州FCの給料未払いを理由に中国を去り、中国国籍も手放している。


横浜FC 写真:Getty Images

中国のサッカー熱が再び盛り上がるには

しかし、これだけ解散したクラブがあるにも関わらず、1998年の横浜フリューゲルス消滅の後に市民クラブとして立ち上げられた横浜FCのようなケースが出てこない理由としては、中国が共産主義国家であるが故、市民自らの手でクラブを結成しようという機運が高まらないことが挙げられるだろう。良くも悪くも、中国共産党の一党独裁体制の政治によって受け身とならざるを得ない国民性が壁となっているのではないか。

近年になって、甲級リーグ、乙級リーグに属する地方都市のクラブでは、市民の手で地域密着型の運営を図り成功している例が出てきてはいるが、実力的にスーパーリーグにまでには及んではいない。また、日本以上ともいわれる少子化社会の中、若いサッカーファンの興味が欧州サッカーに向いてしまっているようだ。

かと言って、スーパーリーグのスタンドに閑古鳥が鳴いているわけではない。2024シーズンは平均19,431人もの観客動員を誇っている。この数字は最盛期には遠く及ばないものの、J1リーグに匹敵するものだ。ビッグネーム路線は諦めざるを得なくなったが、身の丈に合った経営に努めれば、まだまだ持続可能な状態とも言える。

また、現在W杯アジア最終予選グループCでは、日本代表の独走と、二番手と目されていたオーストラリア代表とサウジアラビア代表のモタつきによって、中国代表は最下位ながらも2位との勝ち点差はわずか「1」だ。2002年の日韓W杯以来のW杯出場となれば、消えかかっている中国国内のサッカー熱は再び盛り上がるだろう。

バブルを追い風に創立され、世界的ビッグネームと共にサッカーブームを巻き起こした後、バブル崩壊によって弱体化し、クラブの合併・消滅や観客動員の激減などは、Jリーグもかつて通ってきた道だ。Jリーグはそこから地に足を付けた経営に舵を切り、V字回復を果たした。中国サッカー界は今こそ、日本のリーグ運営やクラブ経営を手本に再スタートを図るべきではないだろうか。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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