Jリーグ

J3全クラブ監督の通信簿&続投可能性

カマタマーレ讃岐 サポーター 写真:Getty Images

カマタマーレ讃岐:米山篤志監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:100%

今2024シーズン16位という成績にも関わらず、11月9日に米山篤志監督の来季続投を早々に発表したカマタマーレ讃岐。2017年にS級ライセンスを取得した米山監督は、町田ゼルビアのコーチ(2020-22)を経て、2023シーズンから讃岐の監督に就任したが、1年目も今季も16位と、特筆すべき成績を挙げられずにいる。

元々、地元出身の北野誠監督が、2010年の四国リーグからJ2昇格まで9シーズンにもわたって監督を務めた。北野監督が勇退すると、今度は毎、監督を代える負のスパイラルに陥り、J3でも7シーズン連続で2桁順位に終わった。

チーム人件費はJ3最低レベルとあって、現実的な目標がJ3残留にあることは明らかだ。米山監督の続投も、将来的なJ2昇格を見据えたものではないだろう。チームのトップスコアラーが36歳のベテランMF川西翔太(5ゴール)である事実がそれを証明している。

来季から使用する「甲冑」をコンセプトとした新デザインのユニフォームがお披露目されたが、上位進出のためには、レンタル加入を含めて若い才能を発掘していく必要がありそうだ。


服部年宏監督 写真:Getty Images

FC今治:服部年宏監督

評価:★★★★★/続投可能性:90%

服部年宏監督は、2022-2023シーズンにJ3福島ユナイテッドで監督を務めたものの、1年目11位、2年目15位と、お世辞にも成功とは言い難い成績に終わった。しかし今2024シーズンは、2度にわたって日本代表を率いて2度のW杯を経験した岡田武史オーナーの下、FC今治の監督として捲土重来を期して臨み、就任1年目でJ2昇格という大仕事を成し遂げた。

開幕4連勝後に2連敗2連続引き分け、第11節大宮アルディージャ戦から第14節福島ユナイテッド戦まで4連敗と序盤戦は安定しない戦いが続いたが、夏場に一気に調子を上げ、第17節SC相模原戦から第28節松本山雅戦まで12戦負けなし(9勝3引き分け)。第28節に首位に立った後はその座を守り続け、カターレ富山の急追を凌ぎ切り、2014年に岡田氏がオーナーに就任して10年で悲願のJ2昇格を果たした。

監督業を始めた福島時代は理想と現実の狭間で苦しんでいる印象だったが、今治では19ゴールを決め得点王を獲得したブラジル人FWマルクス・ヴィニシウスの決定力を最大限に生かしたサッカーで他を圧倒。それなりの“駒”を与えれば結果を出す指揮官であることを自ら証明し、福島時代の汚名をそそいでみせた。

2023年にオープンした今治里山スタジアム(現アシックス里山スタジアム)は、収容人数約5,000人にも関わらず平均3,700人もの観衆を集め、今治の地にしっかりと根を下ろした。同スタジアムはJ1基準である、1万5,000席まで増築される計画もあるという。


ギラヴァンツ北九州 サポーター 写真:Getty Images

ギラヴァンツ北九州:増本浩平監督

評価:★★★☆☆/続投可能性:100%

終盤までプレーオフ進出を争ったものの、結果的に7位に終わったギラヴァンツ北九州。2016シーズンJ2最下位でJ3に降格すると、J2とJ3を行ったり来たりの“エレベータークラブ”となってしまった感がある。2023シーズンはJ3最下位となるが、JFL優勝がアマチュアのHonda FCで、2位のブリオベッカ浦安もJ3クラブライセンスを申請していなかったため“命拾い”した形だ。

今2024シーズンから指揮を執る増本浩平監督は、2023年にS級ライセンスを取ったばかりのいわば“新人監督”だ。湘南ベルマーレユース、東京農業大学を経て、JFLのSC鳥取(2007年「ガイナーレ鳥取」に改称)に入団したものの、わずか3年で現役生活にピリオドを打ち指導者に転身。横河武蔵野や松本山雅でコーチ経験を積み、2023シーズンに鳥取の暫定監督として就任時18位だったチームを6位まで引き上げた手腕を買われ、北九州の監督に抜擢された。

昨シーズンは運良くJFL降格を免れたものの、落ちるところまで落ちたチームを浮上させただけではなく、セレッソ大阪のユース育ちながら8度の移籍を繰り返してきた33歳のFW永井龍に背番号10を託し、チーム総得点の3分の1の14ゴールを記録するチームのエースとして再生させた増本監督。

チーム在籍4年目の主将MF井澤春輝を中心に夏場に快進撃を見せたが、終盤の息切れでプレーオフにはあと一歩届かなかった。しかし、増本監督の手腕は称賛に値するもので、まだ2試合を残しての続投発表(11月15日)にも納得だ。


大熊裕司監督 写真:Getty Images

テゲバジャーロ宮崎:大熊裕司監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:100%

テゲバジャーロ宮崎は、2014シーズンから九州リーグに参戦、2017年に石崎信弘監督の下でJFL昇格を成し遂げ、2021シーズンからJ3に戦いの場を移している。同シーズンはJFL時の倉石圭二監督がS級ライセンスを所持していなかったため、内藤就行監督が就任。いきなり3位という好成績を挙げるが、なぜか監督を交代させ、その後毎年監督交代を繰り返すことになる。

今2024シーズン就任した大熊裕司監督。リーグ戦初勝利まで実に8戦を要し、中盤戦まで下位を抜け出せず、終盤の追い上げで何とかJFL降格は免れたものの、15位に終わった宮崎。最終節翌日に発表された続投発表のニュースには、サポーターも納得できないだろう。

12ゴールを記録したFW橋本啓吾と、夏の移籍で獲得し8ゴールを記録したFW武颯を中心とした攻撃陣は魅力的だった。しかし、第19節FC大阪戦から第24節長野パルセイロ戦まで6連敗、第25節いわてグルージャ盛岡戦から第28節FC琉球戦まで4連勝と、安定感のなさが目立ち、コンスタントに実力を発揮できないままシーズンを終えてしまった印象だ。


FC琉球 写真:Getty Images

FC琉球:金鍾成監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:0%

FC琉球は、2003年に沖縄県初のJ参入を目指し創設され、その後解散することになる沖縄かりゆしFCを退団した選手によって結成された。初代監督は沖縄出身の日系二世にして、長く読売クラブで活躍した与那城ジョージ監督だ。JFL時代にもヴェルディ川崎などで活躍した元日本代表DF石川康氏をゼネラルマネージャー(GM)に任命したり、元日本代表のフィリップ・トルシエ監督を総監督に抜擢したり、周囲を驚かせる人事を行ってきた。

2013シーズンのJFLで11位ながらも、2014シーズンから新たに発足したJ3参戦を認められた「J3オリジナル12」の1つ。2022シーズンに4年間守り抜いてきたJ2の座から滑り落ち、昨2023シーズンも17位、今2024シーズン14位と精彩を欠いている。また2021シーズン以降、監督の途中解任を繰り返している。

今2024シーズン指揮を執った金鍾成監督はシーズンを完走し一時は昇格圏にも浮上した。しかし、まだ3試合を残しわずかながら昇格プレーオフ進出の可能性がある11月5日に、今季限りでの退任が発表された。直後の第36節大宮アルディージャ戦でのドロー(1-1)で、昇格の望みが完全に断たれた。

シーズンを通して【3-4-3】か【3-5-2】のフォーメーションを敷き、攻撃的サッカーを目指したものの接戦に弱く、下位チーム相手に勝ち点を取りこぼしたことが最後に響いた。

クラブは今季開幕前、“面白法人”を自称する鎌倉市が本社のIT企業・株式会社カヤックが筆頭株主となる。スポーツビジネスに参入した同社は、沖縄に子会社の株式会社アルファドライブを設立するなど、その本気度が伝わってくる。

来2025シーズンの新監督として、5月にS級ライセンスを取得したばかりで、浦和ユースの監督を務めていた平川忠亮氏の就任が内定している。今回の監督交代劇もクラブ改革の一環と思われ、奮闘していた金監督にとっては気の毒だが、新オーナーがどういったクラブ運営をしていくのか、来季以降のチーム編成にも注目したい。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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