Jリーグ

J2全クラブ監督の通信簿&続投可能性

秋葉忠宏監督 写真:Getty Images

清水エスパルス:秋葉忠宏監督

評価:★★★★★/続投可能性:90%

昨2023シーズン、昇格プレーオフ決勝(国立競技場/東京ヴェルディ戦1-1でレギュレーションにより東京Vが昇格)で、悲劇を味わった清水エスパルス。例年の清水であれば、ここで監督交代となっていただろう。しかし、山室晋也社長以下フロントは、秋葉忠宏監督との“心中”の道を選ぶ。5年連続でシーズン途中に監督を更迭してきたクラブにとっては英断ともいえる選択だった。

今シーズンは「J1昇格」のみならず「優勝」という目標を立て、クラブ初となる2年連続でのJ2のシーズンに臨んだ。開幕連勝スタートを切ったが、早くも第3節の長崎戦(トランスコスモススタジアム長崎)で1-4の惨敗を喫してしまう。序盤にしてサポーターを不安にさせたが、ここから盛り返し、特に本拠地のIAIスタジアム日本平では、10月20日の第35節山形戦(1-2)で敗れるまで13勝2引き分けという無類の強さを発揮。ホームでの強さが結果的に、横浜FCとのデッドヒートを制し、J2初優勝に繋がった。

まだ正式発表には至っていないものの、続投濃厚の秋葉監督。来季J1初采配となるが、不安点もある。2年連続J2となったことでチームを離れた選手も多く、今季の選手編成は「レンタル選手+外国人+30代以上」が中心となってしまっている点だ。J1に入っても中位に位置する約22億円の人件費を誇る清水だが、再びシーズン途中での監督解任とならないためにも、大幅な補強が必要だろう。


須藤大輔監督 写真:Getty Images

藤枝MYFC:須藤大輔監督

評価:★★★☆☆/続投可能性:90%

現役の最後に東海リーグ時代の藤枝MYFCに所属し、J3時代の2021シーズン途中から指揮を執る須藤大輔監督。2018シーズン途中にガイナーレ鳥取の監督に就任した際も、最終的にチームを3位に押し上げた実績がある。シーズン初めから指揮を執った2022シーズンには藤枝はJ3で2位に入り、クラブ初のJ2昇格を成し遂げる。

今シーズンは開幕5戦を1勝3敗1引き分けとスタートダッシュには失敗したが、その後盛り返し、3億円にも届かないチーム人件費の中で、13位という順位は十分に合格点だ。16ゴールを挙げたエースFWの矢村健を中心に、攻撃的サッカーを貫いた。課題があるとすればワースト2位タイの失点数だが、だからといって守備的なチームに変えることは、“サッカーの街”を自負する藤枝市のクラブとして良しとはしないだろう。

エースの矢村はアルビレックス新潟からのレンタルとあって、新潟に戻る可能性も高いが、ほとんどの選手が25歳以下の若いチームでもある。クラブの生き字引といえる須藤監督が新たな才能を発掘し、攻守が噛み合えば、上位を狙えるポテンシャルを秘めている。


木山隆之監督 写真:Getty Images

ファジアーノ岡山:木山隆之監督

評価:★★★★☆/続投可能性:60%

今J2最終節、J3降格が決まっている鹿児島ユナイテッドを相手に痛恨のスコアレスドローによって4位から5位に転落し、昇格プレーオフ準決勝をアウェイ(対モンテディオ山形/NDソフトスタジアム山形)で戦うことになったファジアーノ岡山。

開幕から手堅く勝ち点を積み重ね、プレーオフ圏外に落ちることもほぼなく、リーグ戦での連敗もなく、安定した試合運びが光るチームを作り上げたのが木山監督だ。

2022シーズンから指揮を執る木山監督は、2003年母校の筑波大学の監督から指導者キャリアをスタートさせ、水戸ホーリーホック(2008-10)、ジェフユナイテッド千葉(2012)、愛媛FC(2015-16)、モンテディオ山形(2017-19)、ベガルタ仙台(2020)と、Jクラブの指導歴は豊富。岡山でも就任した2022シーズン、3位でJ1参入プレーオフ(1回戦で山形に敗戦)という成績を残した。

監督キャリアのほとんどをJ2で過ごしている木山監督だが、J1昇格の経験は一度もない。“勝負運”のなさは気掛かりだが、J2での戦い方を知り尽くしている指揮官でもある。クラブからの発表がない上、今季3年目とあって、続投はプレーオフの結果次第だろう。


徳島ヴォルティス 写真:Getty Images

徳島ヴォルティス:増田功作監督

評価:★☆☆☆☆/続投可能性:100%

徳島ヴォルティスの今シーズンは“迷走”という言葉に尽きる1年だった。リカルド・ロドリゲス監督(2017-20)、ダニエル・ポヤトス監督(2021-22)、ベニャート・ラバイン監督(2023)と、スペイン人監督路線を走っていたものの、2023シーズン途中でラバイン監督を解任すると、吉田達磨監督を迎え、今シーズンも続投させる。

しかし、いきなり開幕3連敗。3月30日の第7節群馬戦(鳴門大塚ポカリスエットスタジアム)で敗れると、ゴール裏のサポーターの怒りが爆発。試合後にも居座り社長に謝罪させた挙げ句、クラブ側もサポーターに言われるがまま、その翌日、吉田監督と岡田明彦強化本部長の退任を発表する。怒りの末に我を失ったサポーターの要求を“丸飲み”した形の前代未聞の人事は、Jリーグ全体にも影響を及ぼしかねない悪しき前例となってしまう。

その後を継いだのがプロ初指導となるヘッドコーチの増田功作監督だ。付け焼刃人事とは思えない手腕を見せ、最終的に8位まで順位を押し上げた。

しかしその間、MF島川俊郎の突然の現役引退(その後、台湾社会人甲級リーグ「台中FUTURO」に加入)やMF西谷和希が練習参加を拒否し契約解除、J3ツエーゲン金沢への移籍といった主力の流出が続き、サポーターから「一体、ヴォルティス内部で何が起きているのか…」と心配の声が上がった。

この混乱はシーズン終了後も続く。最終節を前に増田監督の続投が発表されると同時に、クラブの顔で唯一の日本代表経験者だったFW柿谷曜一朗の退団や、谷池洋平強化部長の退任も明らかとなる。この決断は誰によるものなのか、黒部光昭強化本部長は増田監督の手腕を評価したことを公式サイトで明かしたが、柿谷の退団などの核心には触れなかった。

一部では、吉田監督時代から“吉田派閥”と“反乱分子”に二分されていたとも噂されていた徳島。この人事が“吉田派の一掃”なのだとすれば、来季結果を残さなければ、サポーターの怒りの矛先は黒部強化本部長と増田監督に向かうのは必至だ。徳島フロントは自ら、茨の道を選んだと言えよう。


石丸清隆監督 写真:Getty Images

愛媛FC:石丸清隆監督

評価:★★☆☆☆/続投可能性:30%

2013シーズンから2014シーズンに愛媛FCを指揮し、2022シーズンに8年ぶりに戻ってきた石丸清隆監督。3年目となる今季は、ラスト11戦勝ちなしで、J2残留ギリギリの17位に終わった。

チームの顔だった元日本代表DF森脇良太の引退と「ポジティブエナジャイザー」就任や、背番号10を背負ったエースFW松田力、今季15試合に出場したFW曽田一騎、ユース育ちのDF三原秀真の退団が既に発表されているが、石丸監督の去就は未だ発表されていない。

2023シーズンはJ3優勝の立役者だった石丸監督だが、クラブ自体2~3年スパンで監督を交代させていることから、若返りと同時に新指揮官を探っている段階という見方もできる。特にラスト10戦で、8敗2引き分けという締めくくり方では、来季続投させることへの不安もあるだろう。

しかも来季は、同じ県のライバル、FC今治がJ2にやってくる。“愛媛ダービー”では、先輩の意地を見せ付けなければならない。新監督を就任させるとすれば、若返ったチームでまずはJ2に定着することを優先した人選となりそうだ。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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