
小林監督の続投が好ましい理由
栃木の過去の指揮官は、田坂和昭監督(2019-21)、時崎悠監督(2022-23)と、J3福島ユナイテッドから招聘する人事が続いた。田坂体制下では守備偏重の戦術を採用したものの得点力不足に悩み、時崎体制となり今度は攻撃的サッカーを志向したものの失点癖が止まらなくなるなど、チームカラーが一貫しなかった。
さらに、地元の栃木出身で昨2023シーズンまで在籍し攻撃陣を引っ張っていたMF西谷優希が、双子の弟・和希がいる金沢へ移籍。主将を務めていたMF佐藤祥や、DFリーダーと期待されていた福森健太の負傷離脱も響いた。
攻撃陣では、ユース育ちの生え抜き選手として期待されていたFW小堀空の低調なパフォーマンスや、フィジカルに長けるナイジェリア人FWイスマイラを有効に起用できなかった点も響く。ガンバ大阪からのレンタル選手でチーム最多の7得点を記録した南野と、6得点を記録した生え抜きの宮崎の、個人の技術に頼る状況だった。
J3で迎えることとなった来2025シーズン、小林監督の去就やレンタル選手の動向など不確定要素が多い栃木だが、“昇格請負人”の異名を取る小林監督の続投が好ましいように思われる。春季キャンプから戦術を叩き込むことで、手堅く勝ち点を稼ぐチームに様変わりすることが期待できるからだ。
チーム編成に関しても、育成型期限付き移籍の立場である南野を残留させることができれば、攻撃の中心としてJ3の得点王争いにも顔を出すだろう。

J3を舞台に「栃木ダービー」が誕生
もう1つ、起爆剤となり得るのが、現在JFL首位を独走する栃木シティFCの存在だ。このまま昇格を成し遂げれば、J3を舞台に「栃木ダービー」が誕生することになる。
奇しくもこの2チームは、前身クラブの創立年が同じ1947年(栃木SC=栃木蹴球団、栃木シティ=日立栃木サッカー部)。本拠地は、栃木SCが県庁所在地の宇都宮市だが、栃木シティは1884年まで県庁があった栃木市という“因縁”もある。
降格し1年でのJ2復帰を目指す栃木SCと、ついにJの仲間入りを果たし勢いに乗る栃木シティという立ち位置の違いは明らかだが、だからこそ盛り上がりが期待できるだろう。J3でのダービーとしては、歴史的に対立関係にあった松本山雅と長野パルセイロの「信州ダービー」が有名で、3部リーグにも関わらず1万人以上の観客動員を記録するほどの熱狂ぶりだ。
信州ダービーほどのムーブメントを生むことは難しいかもしれないが、高校野球を筆頭とした“野球県”のイメージが強く、日本人初のNBAプレーヤー田臥勇太を擁するバスケットボールBリーグ「宇都宮ブレックス」も人気を集めている栃木県において、サッカー文化を根付かせるチャンスでもあるのだ。
こう考えれば、J3降格も悪いことばかりではない。これを機に栃木SC(そして栃木シティ)は、ピンチをチャンスに変える好機でもあると、ポジティブに考えてみてはどうだろうか。
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