Jリーグ サガン鳥栖

J2降格の鳥栖に“八百長疑惑”!?裏には町田躍進の陰の立役者も

サガン鳥栖 写真:Getty Images

 10月19日に行われたJ1第34節で、最下位20位のサガン鳥栖は、アウェイの京都サンガ戦(サンガスタジアム by KYOCERA)で0-2で敗れ、2012年にJ1昇格して以来初めてのJ2への降格が決まった。

 今2024シーズン鳥栖は、就任3年目となる川井健太監督の下で開幕を迎えたものの、第25節終了時点で7勝2分16敗と振るわず、同監督は8月8日に契約解除。後任として、その前月からテクニカルダイレクター(TD)を務めていた木谷公亮氏が新監督に就任した。

 しかし、成績は上向くどころか低空飛行を続け、J1リーグで3分け7敗、さらに8月21日に開催された天皇杯ラウンド16(維新みらいふスタジアム)ではJ2のレノファ山口に0-2で敗れ下剋上を許すなど、未だ公式戦未勝利のまま、降格が決まってしまった。

 鳥栖降格のニュースと同時にJリーグファンをザワつかせているのが、山口新聞が10月20日付8面で報じた記事だ。降格の原因として、乏しい資金力やクラブ幹部の判断の誤りを指摘すると同時に、「川井監督が志向する攻撃的なサッカーに不満を持つ幹部が、他のJ1クラブのコーチに助言を仰ぐようになった。同コーチは旧知の鳥栖選手、スタッフにも直接指示を出し、プレーに迷いを生じさせた」と報じたのだ。

 そして、同記事内で言及されているこの「J1クラブのコーチ」が、2018年途中からと2019年途中から2021年まで鳥栖の監督を務め、有力選手が毎年のように流出する中でも手堅く勝ち点を積み上げ、J1に残留させ続けた金明輝元監督(現町田ゼルビアヘッドコーチ)ではないかと噂されている。

 金元監督は2021年オフの退任後、Jリーグ側が複数の告発を受けた形で調査した結果、選手・スタッフに対する暴力や暴言といったパワーハラスメント行為が発覚。日本サッカー協会(JFA)は「JFA指導者に関する規則」第20条第7号の「暴言・暴力及びハラスメント行為を行わない」行為に違反したとして、S級ライセンスからA級への降級を決めた。同制度初の処分である厳罰の理由として、トップチームの選手のみならず、未成年のユース選手にまで手を掛けていたことが勘案された。

 しかしその後、金氏はJFAの定める1年間の研修と社会奉仕活動に従事し、S級ライセンスを再取得すると、2023シーズンに町田のヘッドコーチに就任。黒田剛監督を支えてJ1昇格を成し遂げ、そしてJ1クラブとして迎えた2024シーズン、大方の予想を見返す大躍進を演じる陰の立役者となっている。

金明輝コーチ(左)黒田剛監督(右) 写真:Getty Images

 常に財政難のクラブにあって、ただでさえ選手の入れ替わりの激しい鳥栖にあって、選手の中に金氏を慕う人物はそう多くはないだろう。しかし、フロントには、2021シーズンには7位と素晴らしい成績を残した金氏を慕うスタッフがいても不思議ではない。チームの危機に、思わず他クラブのヘッドコーチを務める金氏に連絡を取り、アドバイスを求めたという可能性もあるだろう。

 しかしこの行為は、Jリーグ規約の第1章第3条第7項の「Jリーグ関係者は、職務の遂行を通じて知り得た協会、Jリーグ、Jクラブその他のJリーグ関係者に関連する一切の秘密または内部事情を第三者に開示または漏えいしてはならない」とする遵守義務、第5章第89条の「試合の戦略・戦術・選手の起用・トレーニングの内容等の部外者への開示禁止」、さらには、第7章第111条の「監督、コーチおよび育成部門の責任者は、第1章第3条第7項に定める守秘義務を遵守するものとする」とする規定に違反しているのではないかという疑惑が浮上しているのだ。

 これらの規約は、いずれも八百長試合防止のためのもので、この土台の上に、totoなどのサッカーくじの信頼性が担保されている。藁をもつかむ思いでアドバイスを求めた鳥栖のスタッフがいたとしても、その焦る気持ちは十分に分かるし、仮に、旧知の仲間からアドバイスを求められ、これに応えたとしても、金氏の古巣を案じる気持ちも理解できる。しかし、Jリーグ規約を持ち出されれば、「ダメなものはダメ」となってしまう。

 何かに付けて悪く言われる町田に所属している上に、過去の行状が故に金氏がバッシングを受ける可能性もあるが、この件が事実だったとしても、勇み足を踏んでしまった鳥栖スタッフが原因の“もらい事故”といっていいだろう。

 Jクラブも60クラブにまで増え、選手や指導者の行き来もそれに比例して増えている。そして、今では敵味方に分かれていても、過去には同じ目標に向かって共に仕事をした仲間であるケースも多々あるだろう。これが、規約を適用するかしないかの“グレーゾーン”を生じさせ、難しい点でもある。

 第一報を報じた山口新聞は、山口県の県紙でありながら、県庁所在地の山口市ではなく下関市に本社を構え、九州北部のニュースもカバーしている。故に、単なる“門外漢の飛ばし記事”ではないだろう。

 この記事の意図は、いかに鳥栖の経営陣にビジョンがなく、資金難であることに危機感もないことを指摘した点にある。

 昨年、37歳の若さで運営会社「サガン・ドリームス」の新社長に就任したばかりの小柳智之氏にとっては、いきなりの試練となってしまった。しかし過去には、自らの方針に異を唱えるスタッフを片っ端からクビにしスポンサー離れを招いた建設会社経営の古賀照子氏や、元佐賀大学学長の肩書を持ってはいたが経営に関しては全くの素人だった楠田久男氏といったトンデモ社長を据え、当時の鈴木昌チェアマンから「このままの経営が続けばJリーグからの除名や退会勧告もやむなし」とまで言われたクラブだ。古参のサポーターからすれば、“あの頃よりはマシ”と感じているのではないだろうか。

 もう一度、鳥栖が原点の“砂岩”と化し、力を付けてJ1の舞台に戻ってくる日を待ちたい。