Jリーグ 福島ユナイテッドFC

J2昇格プレーオフを目指す福島ユナイテッドの希望と課題

福島ユナイテッド 写真:Getty Images

10月13日に開催された明治安田J3リーグ第32節、勝ち点46でJ2昇格プレーオフ圏内の6位に付けている福島ユナイテッドは、首位の大宮アルディージャ戦(NACK5スタジアム大宮)で2-3で敗れ、昇格プレーオフ圏外の7位に転落した。6位のアスルクラロ沼津との勝ち点差はわずかに「1」。まだまだプレーオフ出場へ2024シーズン残り6節、一戦必勝の態勢が続く。

次節は3位に付けるカターレ富山とのアウェイ戦だが、圧倒的な強さでJ2昇格を決めた大宮を相手に2得点。さらにその前節のホーム岐阜戦(とうほう・みんなのスタジアム)では4-3で打ち合いを制するなど、攻撃陣は好調をキープしている。クラブの最高記録は2021シーズンの5位だが、今季はそれ以上が狙えるだろう。

J2プレーオフ進出争いは熾烈を極めており、4位のFC大阪(勝ち点48)から13位のガイナーレ鳥取(勝ち点43)までに10チームがひしめく大混戦。勝ち点では雌雄が決せず、得失点差、総得点数、あるいは当該チーム間の対戦成績、反則ポイントで決まる可能性もある。とにかく11月24日、14時同時キックオフで行われるJ3最終節、全試合終了のホイッスルを聞くまで、何が起きるか分からない激戦だ。

福島は、富山戦後の相手は、SC相模原、奈良クラブ、ツエーゲン金沢、沼津、いわてグルージャ盛岡と続く。そのうち相模原、金沢、沼津はプレーオフ出場を争う直接対決。奈良、盛岡はJ3残留を懸け、必死の戦いを挑んでくるであろう厄介な相手だ。


寺田周平監督 写真:Getty Images

J3で11年目を迎えた福島

J3で11年目を迎えた今シーズン、川崎フロンターレ一筋12年の現役生活を送り、2008年、32歳にして日本代表に初選出された元DFの寺田周平氏を監督に迎えた。

寺田氏は2010年オフの引退後、2011年から川崎でトップチームや下部組織で指導経験を積み、川崎の元監督(2004-2009)で、2012年のロンドン五輪では日本代表を44年ぶりの4強に導き、2023年から福島のテクニカルディレクター(TD)を務める関塚隆氏に請われる形で、自身初の監督に就任した。

DF出身でありながらも4-3-3をベースとした攻撃的サッカーを志向し、総得点49は、プレーオフを争う10クラブの中ではトップの数字だ。3トップを形成するのは、今季10得点の塩浜遼、6得点の樋口寛規、同じく6得点の森晃太。さらに中盤には、9月に中国で開催されたU-20アジア杯予選の日本代表に選出され、背番号10を託されたMF大関友翔が君臨し、寺田監督の目指す攻撃サッカーを体現している。

大関の個人技は、先日の大宮戦でも発揮され、大宮DFがイエローカード覚悟のファールで止めるシーンも散見された。


福島ユナイテッドのサポーター 写真:Getty Images

2024シーズン想定外の大善戦

攻撃に重きを置く戦術である上、シーズン中盤の7月にDFの要で主将を務めていた堂鼻起暉を同じ福島県をホームとするJ2いわきFCに引き抜かれたこともあり、失点も多い(41)。得失点差は+8にとどまり、32節終了時点で完封試合は8、スコアレスドローに終わった試合も2と、チームの特色が数字にそのまま表れている格好だ。

2022シーズンは服部年宏監督の下、11位。2023シーズンは依田光正監督の下、15位に終わり、今季開幕前はJFL降格候補にも数えられていた福島。

しかしリーグが始まると背番号10を背負う森や、後に移籍することになる堂鼻といったベテランを軸に、大卒の生え抜き選手や、川崎、徳島ヴォルティス、柏レイソルから育成型期限付き移籍で加わった若手で構成されたメンバーが一丸となり、想定外の大善戦を演じている。大宮戦の先発選手のうち4人がレンタル選手で、大関も川崎からのレンタルだ。

こうしたチーム作りをしているクラブは、資金力のないJ3クラブでは珍しくはないが、毎年のように選手が大幅に入れ替わることで、継続的な強化を困難にさせている。

Previous
ページ 1 / 2

名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

筆者記事一覧