Jリーグ

【J3最下位】いわてグルージャ盛岡がJFL降格後に待ち受ける悪夢

西大伍(北海道コンサドーレ札幌所属時)写真:Getty Images

JFL降格の場合の悪夢2:主力選手の流出

加えて、JFL降格の暁には、主力選手の流出も避けられない。

2023シーズン途中に盛岡に加入した元日本代表のDF西大伍は、開幕スタメン(2月25日カマタマーレ讃岐戦1-1)に名を連ね、前半8分には得点も記録した。しかし2022年の浦和レッズ所属時代には一般女性との妊娠中絶トラブル、さらに今年8月にはYouTubeで「J1のレベルが落ちていると感じる」と発言し炎上するなど、ピッチ外での話題が先行している印象がある。

もう1人の元日本代表選手で、2008-2010シーズンにはスコットランドのセルティックに所属したMF水野晃樹は、2024シーズンほとんど試合に絡めないまま(25節終了時点で出場時間は計66分)、9月29日に今季限りでの引退を発表した。

その穴を埋める補強が必須なのだが、JFLでは待遇やレベルがJリーグに比べて劣るため、移籍を希望する選手が続出するだろう。主力の流出は即チーム力の低下につながり、“ドロ沼”にハマり込む可能性もある。


日本サッカー協会 写真:Getty Images

JFL降格の場合の悪夢3:観客数の減少

さらにJFLはテレビ中継もネット配信もなく注目度が下がり、観客数の減少が避けられない。熱心なコアサポーターは別として、ライトファンの岩手県民からの関心は薄れ、サッカー熱も低下するだろう。観客数の減少は収益の減少に直結し、チームの士気低下を招くという悪循環に陥ることは必至だ。

16チームが所属する全国リーグであるJFLは、アマチュア混在といえどJリーグ昇格を目指す野心溢れるクラブも多く、実力が拮抗している厳しいリーグだ。盛岡はもちろん1年での再昇格を目指すことになろうが、JFLでも成績不振が続いてしまえば、さらに地域リーグへの降格というリスクも生じてくる。地域リーグまで降格してしまうとクラブの存続自体が危ぶまれ、サポーターはもちろん岩手県内のスポーツ熱への低下は避けられない。

第一、JFLに降格したとして、NOVAホールディングスが盛岡の事実上のオーナーであり続ける保証はどこにもないだろう。

同社は、英会話教室事業において、受講料を前金で支払ったにも関わらず授業が受けられないというトラブルが頻出し、結果、前身の株式会社ノヴァは2007年10月に439億円という巨額の負債を抱え倒産に陥った過去がある。投資会社の支援の下、再建を果たしたものの、赤字になると分かり切っているサッカークラブの経営を続けるメリットは同社にはなく、“損切り”される可能性もゼロではないのだ。

JFL降格に伴ってクラブの経営体制に対する批判や内部の混乱が生じ、フロントの責任問題や経営陣の入れ替えなどが考えられ、クラブの組織力やビジョンが揺らぐことにもなりかねない。

これらの要素が重なることで、JFL降格後にはクラブ運営がさらに厳しくなり、Jリーグ復帰への道のりが遠のき、最悪、解散という“悪夢”のような状況に陥るリスクが高まるだろう。

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名前:寺島武志

趣味:サッカー観戦(Jリーグ、欧州5大リーグ、欧州CL・EL)、映画鑑賞、ドラマ考察、野球観戦(巨人ファン、高校野球、東京六大学野球)、サッカー観戦を伴う旅行、スポーツバー巡り、競馬
好きなチーム:Jリーグでは清水エスパルス、福島ユナイテッドFC、欧州では「銀河系軍団(ロス・ガラクティコス)」と呼ばれた2000-06頃のレアルマドリード、当時37歳のカルロ・アンチェロッティを新監督に迎え、エンリコ・キエーザ、エルナン・クレスポ、リリアン・テュラム、ジャンフランコ・ゾラ、ファビオ・カンナヴァーロ、ジャンルイジ・ブッフォンらを擁した1996-97のパルマ、現在のお気に入りはシャビ・アロンソ率いるバイヤー・レバークーゼン

新卒で、UFO・宇宙人・ネッシー・カッパが1面を飾る某スポーツ新聞社に入社し、約24年在籍。その間、池袋コミュニティ・カレッジ主催の「後藤健生のサッカーライター養成講座」を受講。独立後は、映画・ドラマのレビューサイトなど、数社で執筆。
1993年のクラブ創設時からの清水エスパルスサポーター。1995年2月、サンプドリアvsユベントスを生観戦し、欧州サッカーにもハマる。以降、毎年渡欧し、訪れたスタジアムは50以上。ワールドカップは1998年フランス大会、2002年日韓大会、2018年ロシア大会、2022年カタール大会を現地観戦。2018年、2022年は日本代表のラウンド16敗退を見届け、未だ日本代表がワールドカップで勝った試合をこの目で見たこと無し。
“サッカーは究極のエンタメ”を信条に、清濁併せ吞む気概も持ちつつ、読者の皆様の関心に応える記事をお届けしていきたいと考えております。

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