物にしたかったビッグチャンス
田中を活かしきれないなかでも、湘南は3センターバックの左を務めたMF鈴木淳之介を起点にビッグチャンスを作り出す。前半14分、同選手が柏MF山田雄士(右サイドハーフ)のプレスをいなしてボールを運ぶと、味方DF吉田新(左ウイングバック)へパスを送る。吉田のクロスに合わせたのはFW鈴木章斗で、同選手のスライディングシュートは惜しくも枠外へ逸れている。湘南としては物にしたいチャンスだった。
高めたい3セントラルMFの連係
湘南が多彩な攻撃を仕掛けるために必要だったのは、田中、茨田陽生、池田昌生の3セントラルMFによる緊密な連係だ。
たとえば、田中が柏2トップの後ろに立つ場面で、細谷と小屋松がここへのパスコースを塞ぐためにお互いの距離を縮めたとする。これにより空く柏2トップの脇へ茨田と池田が降りてボールを受ければ、柏のプレスをより簡単に掻い潜ることができたはず。田中が相手2トップを引きつけ、これにより生まれるスペースに茨田と池田がタイミング良く降りる。湘南が今後突き詰めるべきは、この攻撃パターンだ。
また、この試合ではセンターバック鈴木淳之介と左ウイングバック吉田の距離が開きすぎる、もしくは吉田が高い位置をとりきれない場面もちらほら。センターバックとウイングバック間へ茨田を降ろし、同選手に両者の繋ぎ役を担わせる場面をもっと増やしたほうが、湘南の遅攻が安定するはずだ。
後半に痛恨の2失点
湘南は後半開始直後もボールを支配。柏ゴールに迫ったが、一瞬生じた守備の綻びを突かれてしまった。
後半8分、柏GK松本健太からDF古賀太陽、古賀からセンターサークル付近に立っていた小屋松の順でパスが繋がる。小屋松からボールを受けたサヴィオが湘南最終ラインの背後へラストパスを送ると、これに反応した細谷がペナルティエリア内で強烈なシュートを放ち、先制ゴールを挙げた。
ここでは湘南の守備隊形が[5-1-4]に近い配置となっており、インサイドハーフ池田の斜め後ろを小屋松に突かれてしまっている。これに加え田中のボールサイドへの寄せも遅れたため、小屋松を捕捉しきれず。相手GKがボールを保持した際に、ハイプレスを仕掛けるのかそれとも[5-3-2]の布陣による撤退守備へ移行するのか。この判断がチーム全体として曖昧だった。
後半31分には、柏の自陣からのフリーキックへの守備が緩慢に。ゴール前にロングボールを送られたうえ、柏MF戸嶋祥郎にこぼれ球を回収されると、同選手の右サイドからのクロスに反応したFW木下康介に追加点を奪われた。
後半アディショナルタイム、途中出場の湘南FW根本凌のシュートがペナルティエリア内にいた柏DF犬飼智也の腕に当たり、これがハンドの反則と判定される。この反則で得たPKを、同じく途中出場のMF阿部浩之が物にしたものの、湘南の反撃もここまで。J1残留に向け手痛い黒星を喫した。
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