パリ2024オリンピック(パリ五輪)のサッカー女子グループステージ第2節が、現地時間7月28日に行われた。グループCのなでしこジャパンこと日本女子代表は、同組のブラジル女子代表と対戦。最終スコア2-1で勝利し、グループステージの通算成績を1勝1敗(勝ち点3、得失点差0)としている。
最終スコア1-2で敗れた第1節スペイン女子代表戦を踏まえ、なでしこジャパンが施した戦術面の工夫とは何か。また、引き続き取り組むべき課題は何か。ここでは今回のブラジル戦を振り返るとともに、この2点を中心に論評する。
なでしこの積極的な守備
両チームともに[3-4-2-1]の基本布陣を採用。なでしこジャパンは最前線のFW田中美南、及び2シャドーのFW浜野まいかとMF宮澤ひなたの計3人で相手3バックにプレスをかける。これに加え、守屋都弥と古賀塔子の両DF(ウイングバック)が相手ウイングバックを捕捉するオーソドックスな守備を仕掛けた。
中盤へ降りて攻撃の起点を作ろうとするブラジルFWガビ・ヌネス、FWプリシラ、MFマルタには、なでしこジャパンの3センターバック(南萌華、熊谷紗希、高橋はなの3DF)が最終ラインから飛び出して対応。相手選手を積極的に捕まえにいく守備で、試合序盤を掌握した。
ブラジルの2ボランチ、アンジェリナとアナ・ビトーリアの両MFがなでしこジャパンの前線3人と2ボランチ(長野風花と長谷川唯の両MF)の間でボールを受けようとしていたが、この両ポジションのマークの受け渡しが円滑だったため大事に至らず。[5-4-1]の隊形で自陣へ下がるのみだったスペイン戦の後半と比べ、守備の段取りは整理されていた。
リスク回避の攻撃
スペイン戦では[4-4-2]と[3-4-2-1](自陣撤退時[5-4-1])の2つの布陣を使い分けたなでしこジャパン。自陣後方から丁寧にパスを繋ぐ姿勢が窺えたが、最終ラインの立ち位置が横に開きすぎたため、サイドバックやウイングバックがタッチライン際でボールを受けては相手のプレスをもろに浴び、苦し紛れにパスを出す場面が多かった。
サイドバックやウイングバックが自陣後方タッチライン際でボールを受けた場合、この時点で左右どちらかのパスコースが消えるため、パスを出せる角度が180度方向に限られる。スペイン戦の前半は古賀とDF清水梨紗(この試合後に負傷離脱)の両サイドバック、後半に右ウイングバックを務めた清水がこの位置でボールを受けたため、なでしこジャパンのパスワークが手詰まりになっていた。
今回のブラジル戦では、自陣でボールを失うリスクを避けるべく、前線3人へのロングパスを多用。ボランチの長谷川も敵陣のサイドへ時折流れ、ボールの収めどころとなっていた。
自陣後方からパスを繋ぐ際の選手配置の悪さ。この問題は棚上げされたが、現状のメンバーでできる最良の攻撃を選択したのは良かった。
前半19分に繰り出した速攻では、宮澤が敵陣右サイドでボールを受け、ゴール前に低弾道クロスを送る。このラストパスに田中が右足で合わせたが、このシュートがゴール枠外に逸れてしまう。なでしこジャパンとしては物にしたいビッグチャンスだった。
前半アディショナルタイム、守屋が敵陣ペナルティアーク内から放ったシュートが、ペナルティエリア内に立っていたブラジルDFラファエレの腕に当たる。これがハンドの反則と見なされ、なでしこジャパンにPKが与えられるも、田中のキックが相手GKロレナにキャッチされてしまう。前半に訪れた2度の得点チャンスを逃したことが、後半に尾を引く形となった。
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