スペイン代表 EURO

ラミン・ヤマルの史上最年少得点が持つ記録以上の大きな意味【ユーロ2024】

ヘスス・ナバス 写真:Getty Images

右サイドのもう一つの物語:38歳のヘスス・ナバス

新星ヤマルの後方を支えたスペインの右サイドバックは、出場停止となったカルバハルに代わってナバスが先発した。年齢は16歳のヤマルの2倍以上となる38歳だ。

マッチアップしたフランスのFWキリアン・ムバッペ(レアル・マドリード)の得意とする縦へのドリブル突破をベテランの勘で封じ込めたナバス。破られたわけではないが、眼の前でムバッペにアシストを許したのが悔しかったのだろうか。リベンジとばかりに、スペインの2点目につながる鋭いクロスを入れたのはナバスだった。

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年齢的に代表キャリアが、あといくばくあるか定かではない。試合後は目を真っ赤にして感極まる姿があった。


ダニエル・カルバハル(左)ペドリ(中)ロビン・ル・ノルマン(右)写真:Getty Images

出場停止の選手たち:守護天使と蘇った主

この試合のスペインのベンチの背後のスタンドには、妙な威光を放つ面々があった。ドイツ戦で負傷退場してチームを離脱したはずのMFペドリ(バルセロナ)と、出場停止のカルバハルとDFロビン・ル・ノルマン(レアル・ソシエダ)だ。まるで守護天使のように後方からベンチと一体となり大きな声を出してチームを励まし続けた。

主将のモラタもドイツ戦でイエローカードを提示されたことになっていた。しかし後にUEFAが誤表記だったことを認め、この試合で蘇ったのだった。フランス戦では本当に警告を受けないようにと、かなり慎重になっている感があった。

試合後、乱入したファンを制止しようとして滑った警備員と激突し、険しい表情で右足を引きずっていたモラタ。果たして決勝戦(日本時間7月15日対イングランド)に間に合うように復活できるだろうか。


キリアン・ムバッペ 写真:Getty Images

トリコロールの追撃も陥落せず

フランスのキャプテンであるムバッペは、ユーロ初戦で鼻を骨折して間もないにもかかわらず、この準決勝ではマスクをつけずにプレーした。これは「また折れても構わない」という覚悟の表れだろう。

9分に左サイドでボールを受けたムバッペは右足でしなやかなピンポイントクロスを上げると、スペインDFアイメリク・ラポルテ(アル・ナスル)とDFマルク・ククレジャ(チェルシー)の間に割って入ったFWランダル・コロ・ムアニ(PSG)が頭で合わせて先制したのだった。

スペインのシステムはドイツ戦と同じ【4‐2-3‐1】だった。一方でフランスは【4‐3‐3】から選手交代で【4‐2-3‐1】そして【4‐1-3-2】と3つのシステムを駆使して追い上げをはかった。しかし、トリコロール(フランス)の攻撃もスペインを陥落させるにはいたらなかった。

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名前Takuya Nagata
趣味:世界探訪、社会開発、モノづくり
好きなチーム:空想のチームや新種のスポーツが頭の中を駆け巡る。世界初のコンペティティブな混合フットボールPropulsive Football(PROBALL)を発表。

若干14歳で監督デビュー。ブラジルCFZ do Rioに留学し、日本有数のクラブの一員として欧州遠征。イングランドの大学の選手兼監督やスペインクラブのコーチ等を歴任。アカデミックな本から小説まで執筆するサッカー作家。必殺技は“捨て身”のカニばさみタックルで、ついたあだ名が「ナガタックル」。2010年W杯に向けて前線からのプレスを完成させようとしていた日本代表に対して「守備を厚くすべき」と論陣を張る。南アでフタを開けると岡田ジャパンは本職がMFの本田圭佑をワントップにすげて守りを固める戦術の大転換でベスト16に進出し、予言が的中。

宇宙カルチャー&エンターテインメント『The Space-Timer 0』、アートナレッジハブ『The Minimalist』等を企画。ラグビーもプレーし広くフットボールを比較研究。

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