女子サッカー

浦和レディースを牽引する栗島朱里。あのレッズOBを彷彿とさせる判断力

浦和vsマイナビ仙台、前半13分の大まかな隊形。カーラが栗島に釣り出されている

仙台戦でも遠藤をサポート

3月20日に行われたWEリーグ第11節マイナビ仙台戦でも、ボランチの栗島が右サイドバック遠藤をサポート。INAC神戸戦と同じくセンターバック石川と遠藤の間へ降り、ゴールの起点となった。

両チーム無得点で迎えた前半13分、栗島がセンターバック石川と右サイドバック遠藤の間へ降りたことで、守備隊形[4-4-2]のマイナビ仙台のFWカーラ・バウティスタ(左サイドハーフ)が釣り出される。これにより開いたマイナビ仙台のサイドハーフとサイドバックの間で遠藤がフリーになり、ドリブルでチャンスメイク。遠藤のパスを受けた清家がペナルティエリア右隅から強烈なシュートを放ち、浦和に先制点をもたらした。

このゴールで勢いづいた浦和は前半44分にも右サイドから速攻を仕掛け、これをFW島田芽依が結実させる。その後スコア2-0のまま逃げ切り、首位INAC神戸と勝ち点差1で肉薄している(INAC神戸27、浦和26)。


三菱重工浦和レッズレディース MF栗島朱里 写真提供:WEリーグ

栗島が相手サイドハーフを釣り出す

栗島はマイナビ仙台戦終了後にも筆者の取材に応じ、先制ゴールの場面でセンターバック石川と右サイドバック遠藤の間に立った意図を明かしてくれている。やはり相手サイドハーフを釣り出し、これにより開いた相手サイドバックとサイドハーフ間を突く狙いがあったようだ。

ー(INAC神戸戦と同じく)今日もセンターバック石川選手とサイドバック遠藤選手の間へ降りていましたね。そこに立っていた栗島選手のパスから遠藤選手が(相手サイドバックと)1対1になり、そこからの流れ(パス回し)で清家選手のゴールが生まれました。(栗島選手のポジショニングの)効果が出ましたね。

「はい(笑)。点に繋がって良かったです」

ーマイナビ仙台の左サイドハーフ、カーラ選手が釣り出されたところで栗島選手が(遠藤選手へ)パスを出しました。これで遠藤選手が相手サイドバックと1対1になりましたよね。

「ワイドのディフェンス(サイドバック)とサイドハーフの間へパスを入れたら、チャンスになる。この共通理解がチームのミーティングでもありました。そこ(相手サイドバックとサイドハーフの間)に貴子が立ってもいいんですけど、優が立てば貴子がよりゴールに近くなる(タッチライン際から内側へポジションを移せる)と思いました。私がセンターバックとサイドバックの間へ入ったことで、いい感じでゴールに繋がりましたね」


鈴木啓太(浦和レッズ所属時)写真:Getty Images

鈴木啓太を彷彿とさせる栗島

味方を活かすため、チームの機能性を高めるために何をすべきかを常に考えられる。これが栗島の最大の持ち味だと筆者は考える。ゴールやアシストを量産するタイプではないが、こうした人材はチームに不可欠だ。

ここまで攻撃面での貢献に着目してきたが、栗島は守備面でも存在感を示している。相手のパスワークをサイドへ誘導し、タッチライン際のボール保持者やその周辺の相手選手を漏れなく捕捉するのが浦和の守備の要諦であり、栗島は毎試合鋭い出足で相手の攻撃の芽を摘んでいる。

攻守両面において状況判断が的確。この栗島の特長は現J1リーグ所属の浦和レッズ(男子トップチーム)の中盤を長きに渡り牽引し、2015年に浦和一筋のプロキャリアに終止符を打ったMF鈴木啓太を彷彿とさせる。フォア・ザ・チームの精神をとことん突き詰め体現する。そんな栗島はこれからも多くの浦和サポーターの心を掴み続け、彼らから永遠に愛されるだろう。まるで鈴木啓太のように。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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