Jリーグ 湘南ベルマーレ

湘南、山口監督に求めたい[4-4-2]の練度向上。浦和との乱打戦を検証

浦和レッズ MF岩尾憲 写真:Getty Images

守り切れなかった2点のリード

後半開始の笛から僅か15秒後、鈴木章斗が浦和DFマリウス・ホイブラーテンの横パスをカットした後にミドルシュートを放ち、湘南に追加点をもたらす。浦和の出鼻をくじいた湘南の勝利は濃厚と思われたが、ホームチームはこのリードを守りきれなかった。

後半10分、湘南は相手MF松尾佑介にコーナーキックのこぼれ球を押し込まれると、同19分にはセンターサークル内で大野のパスを受けた池田がボールをコントロールできず、ここから浦和の速攻が始まってしまう。この直後にボールを受けようとした浦和MF岩尾憲を、田中とDF大岩一貴のどちらが捕捉するのか。この点が曖昧になり湘南は岩尾にスルーパスを繰り出されると、これに反応した前田に同点ゴールを奪われた。

後半29分に田中のミドルシュートがポストに当たり、跳ね返ったボールをルキアンが押し込んだが、湘南はこの勝ち越しゴールもふいに。迎えた同36分、左サイドから中央へドリブルを仕掛けた松尾に湘南の選手が集まったため、ペナルティアーク後方で待ち構えていたグスタフソンがフリーに。この直後に放たれたグスタフソンのミドルシュートが平岡に当たって軌道が変わり、ボールは無情にも湘南が守るゴールに吸い込まれた。


湘南ベルマーレ MF平岡大陽 写真:Getty Images

もったいない時間を過ごした湘南

前述の通り試合序盤に守備の段取りが曖昧になり、浦和に主導権を握られてしまった湘南。前半20分すぎから平岡と池田の2インサイドハーフが相手サイドバックに寄せることが徹底され、ハイプレスが機能し始めただけに、特にキックオフからの20分間はもったいなかった。

ここからは筆者の見解になるが、ビルドアップ時にサイドバックが自陣後方タッチライン際に立つことが多く、4バックがあまり隊形変化せずにパスを回す傾向が強い浦和には、[4-4-2]の守備隊形で挑んだほうが自分たちの力をより発揮できたのかもしれない。[3-1-4-2](自陣撤退時[5-3-2])で臨んだ今節は浦和の中盤の底グスタフソンに誰がマークに付くのかが不明瞭だったが、[4-4-2]であれば基本布陣[4-1-2-3]のチームへの対応もやりやすくなるだろう。


(図1)湘南が緑で対戦相手が赤。相手左サイドバックへのパス誘発を想定

湘南にとって理想的な守備は

今季J1リーグ4試合消化時点で8失点。クリーンシート(無失点試合)もまだ達成できていない湘南が今後突き詰めるべきは、[4-4-2]の布陣を軸とした中央封鎖、及び相手のパス回しをサイドへ追い込んだうえでのボール奪取だ。

今回の浦和のように相手チームの基本布陣が[4-1-2-3]であれば、まず湘南の2トップが相手2センターバックを捕捉。これと同時に湘南の両サイドハーフが内側へ絞り、相手の中盤の底とインサイドハーフのひとりを捕まえる。さらに相手のもうひとりのインサイドハーフを湘南の2ボランチのどちらかがマークし、ボランチの片割れが後方のスペースをカバー。厳密に言えば[4-2-2-2]や[4-1-3-2]に近い守備隊形だが、第1節川崎フロンターレ戦と第2節京都サンガ戦で[4-4-2]のサイドハーフを務めた平岡と池田は、中央でのプレーを苦手としていない。球際での強さも申し分なく、前述のタスクをこなせるだろう。

相手サイドバックをあえてフリーにし、中央封鎖によってここへパスを誘発したら、湘南も守備隊形をスライドさせる。図2のようにボールサイド側の湘南サイドハーフが相手サイドバックへ素早く寄せ、これと同時に後方のスペースを守っていた湘南の2ボランチの一角が飛び出し、ボールサイド側の相手インサイドハーフを捕まえる。これが理想的な中央封鎖、ならびにサイドへの追い込み守備だ。

(図2)相手サイドバックにボールが渡った後の守備隊形

これに似たような守備を湘南は第1節と2節でしているが、相手のパスをサイドバック方面へ追い込んだ後の守備強度が足りない場面が見受けられ、第1節では川崎FのMF橘田健人([4-1-2-3]の中盤の底)を捕まえきれていないシーンがあった。昨年までの基本布陣[3-1-4-2]に加え[4-4-2]に着手している山口監督には、後者の隊形を基本とするハイプレスの練度向上を求めたい。これが今節の乱打戦を受けての筆者の感想だ。

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名前:今﨑新也
趣味:ピッツェリア巡り(ピッツァ・ナポレターナ大好き)
好きなチーム:イタリア代表
2015年に『サッカーキング』主催のフリーペーパー制作企画(短期講座)を受講。2016年10月以降はニュースサイト『theWORLD』での記事執筆、Jリーグの現地取材など、サッカーライターや編集者として実績を積む。少年時代に憧れた選手は、ドラガン・ストイコビッチと中田英寿。

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