活かされた安藤梢の予測力
試合の主導権を握りながら無得点と、浦和にとって嫌な展開になりかけたが、前半終了間際にビッグチャンスが唐突におとずれる。
同42分、浦和のGK池田咲紀子による自陣からのフリーキックに、FW菅澤がヘディングで反応する。菅澤と千葉の選手の競り合いの末、ボールが相手最終ラインの背後にこぼれると、これを予期していた安藤がダッシュ。同選手が敵陣ペナルティエリアでシュートを放ち、浦和に先制ゴールをもたらした。
「1点目は(菅澤)優衣香のところにボールが来たのですが、彼女にはああいうところでしっかりとボールを後ろに逸らしてくれるという信頼があります。それを予測してあのスペースに走り込んで、ラッキーな形でしたがボールが来て、あとは気持ちで決めました」
41歳のMF安藤の試合後コメントから窺えたのは、豊富な経験に裏打ちされた予測力。これが活かされたゴールだった。
後半開始直後にも浦和が猛攻を仕掛け、同5分に安藤が敵陣左サイドを突破。同選手が放ったペナルティエリア左隅からのクロスが、そのままゴールマウスに吸い込まれた。
安藤の2ゴールで優位に立った浦和は、その後も攻守両面の強度を緩めず。危なげない試合運びで、皇后杯準決勝に駒を進めている。
猶本「先手を取るようにしていた」
先述した浦和の守備のコンセプトは、同クラブMF猶本のコメントからも窺える。試合後の囲み取材(質疑応答)で、同選手は自軍の守備への手応えを口にしていた。
ー千葉の選手たちによるポジションチェンジが激しく、相手のビルドアップを止めるのは難しかったと思います。前線からの守備で気をつけていたことを教えてください。
「後ろの選手(浦和の中盤や最終ライン)がボールの奪いどころを作れるよう、(相手のパスコースを)限定できればいいなと思っていました。相手のGKと2センターバック、アンカー(中盤の底。千葉のMF岸川)を前線の2人で見ていました」
ー単に(漫然と)ボール保持者に寄るのではなく、ボールの周辺状況を察知して、相手のパスの選択肢を奪うような寄せ方をしていた、猶本選手の好プレーが光っていたと思います。やはりこの点は心がけていましたか。
「そうですね。ボールの移動中であったり、バックパスやクリアボール直後に相手がポジションをとるのが遅かったりする場面では、こちらがプレスをかければ相手の(パスの)選択肢が無くなります。(守備面で)先手を取るようにしていました」
ー千葉のパス回しを、片方のサイドへ追いやった後の浦和の守備の強度は高かったと思います。これは猶本選手だけでなく、安藤選手をはじめとする他の選手にも言えることで、これが浦和が主導権を握れた要因だと思います。この点について、猶本選手はどう感じていらっしゃいますか。
「そうですね。先週のリーグ戦から引き続き、その部分は表現できていると思います。選手交代をしても、(チーム全体として)守備の強度を落とさずプレーできているので、そこは自分たちの良さとして続けていきたいです」
ソリッドな浦和に漂う連覇の予感
千葉の攻撃配置の不備に助けられた感もあるが、前後半ともに浦和の守備の強度や練度は高く、特に猶本と安藤が同クラブのハイプレスを牽引。2人ともボール保持者の選択肢を奪うような寄せ方が秀逸だった。知性が伴う激しいプレス。これこそ世界レベルの守備の極意だろう。
昨年12月24日に行われたWEリーグ第6節AC長野パルセイロレディース戦でも、相手GKに対する猶本のプレスから浦和に先制点がもたらされている(3-1で浦和が勝利)。前半7分のこのシーンでも、浦和は猶本を含む2トップが中央のパスコースを封鎖。そのうえで猶本が相手センターバックやGKに寄せたことで、ボール奪取に成功している。パスコース探しに手間取った相手GKからボールを奪った猶本が、そのまま得点を挙げてみせた。
ソリッドな守備を武器に白星を重ね、2023/24シーズンのWEリーグで2位につけている浦和から、同リーグ連覇や皇后杯優勝の予感が漂っている。
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